その日の塾が終わっての帰り道、

翔野は私を送ってくれた。


翔野と私は違う小学校出身で、

中学からみてみると、

翔野の家の方が私の家よりも遠いところにある。


私は徒歩通学だが、翔野は自転車通学だった。


私たちは、一応、数英社を授業で受けていた。


月曜日は数学で、水曜日が英語、

そして日曜日が社会なのだ。


普段はすべての科目で、

19時から21時までの授業なのだが、


その日は始業式ということで、

その日だけ17時から19時の授業だった。



だから一緒に帰れているのである



塾がない時は、大抵は一緒に帰ることにしていた。

お互い部活をしていて、終わる時間が一緒くらいだからだ。



勉強の話から、部活の話、

人間関係の話、家族の話…


私たちは、いろんな話をしてきた。



しかしその日は…



何となく、お互い無言だった。



私の家まであと少し、というところで、

翔野が口を開いた。



「今度の日曜日、どこかに行こうか」



「え?」



私は思わず翔野の方を振り返った。



「俺らがもう受験生てことは…

 俺もちゃんと分かってるよ


 やけん、春休みもずっと

 自習に通ったわけだし」



私たちは、春休みの間、午前中に部活があれば、

午後からは一緒に塾に行くようにしていた。


サッカー部とは大体同じ時間帯だったので、

それが可能だったのだ。


午後から部活の時も、

終わってから21時までは塾に残るようにしていた。


自習室はいつも、私たち二人だけだったが、

お互いそれが心地良かった。



「でもさ、たまには息抜きしてもいいと思う

 春休みも、家と学校と塾の往復だったしさ


 どうせ夏休みは遊べないんだし

 俺、結木とゆっくり過ごせる時間が欲しいよ」



「そうだね、どこかへ行こうか


 春休み、塾ばっかりで、

 おこづかい全然使ってないもの


 ねぇ…私、水族館行きたい」



私は翔野の提案にのった。


翔野の眼が、輝く。



「よしっ、じゃあ決まりな!

 

 水族館か、じゃあ少し遠出になるな

 まぁ、たまにはいっか

 楽しみやなぁ」



翔野は本当に嬉しそうな顔をしていた。

それを見て、私も嬉しくなった。



自分のことをこんなにも想ってくれる翔野が、

本当に愛おしく思えたんだ。