翔野はこちらを少し見て、
それからふっと姿を消した。
私は彼を追いかけた。
音を立てないようにして、
聡子の後ろをするりと通り、
教室から出た。
教室を出た所に、
翔野の姿はなかった。
くつ箱の方へ行って見てみると、
翔野の靴はなかった。
もうその時は何も考えず、
自分も靴を履き替えて、外に出ることしか
出来なかった。
「翔…野…」
翔野はこちらを見ていて、
そして徐に言った。
「ごめん!」
「えっ?」
私はただ、戸惑うばかりだった。
「俺…さ…
ここにひとりで来たんだけど、その間
結木に変な八つ当たりしたなぁって
後悔してたんだ」
「そんな…」
「結木は…あの人のこと何とも思ってないのに
俺…変な方に想像してさ…ごめんな」
翔野は頭を下げた。
「翔野…
不安にならんくて、ええよ
大体ね、翔野だってモテるんやから
私だっていつもヤキモキしとんよ」
翔野は、笑った。
でもその眼はどこか哀しげだった。
気になったけれど、何も問わなかった。
問うても仕方のないことだと思ったからだ。
「今日、一緒に帰れるか?」
「うん、何かお菓子おごって~」
私たちは、務めていつものように振舞った。
いや、私の場合いつもより明るくするよう
努めていたのかもしれない。
私も翔野も、何かが変わってしまったことを
無意識のうちに察していたのかもしれない。