塾に着くと、翔野の靴があるのが分かった。
どうせ授業で会うのだが、
何となく気まずくて、
翔野のいるはずの自習室に行くのはやめて、
授業用の大教室で自習していることにした。
私は、いつも授業で座っている席に座り、
春休みの宿題とその答えを取り出した。
丸付けして、各教科の先生に提出するのが、
宿題として出たからだ。
聡子も、こちらは私の隣1つ空けた席に座ったのだが、
同じことをし始めたようで、
シャッ…シャッ…という小気味よい音が教室内に
響いていた。
2冊目のワークの丸付けが終わった時、
私はふと、手を止めて、聡子の方を見た。
聡子の丸付けの音が聞こえなくなったからだ。
横を見ると、彼女は机に突っ伏していた。
よく聞くと、寝息も聞こえてくる。
‘疲れてるんやなぁ・・・’
と私は思った。
実は彼女も、私と同じく生徒会の役員で、
副会長を務めていた。
明後日が入学式なのだが、
その式の責任者が、今回は聡子なのだ。
だから春休み中も、しばしば部活を抜けて、
先生との打ち合わせに参加したりしていた。
お祝いの言葉を述べるのは
会長である私なのだが、
彼女の働きぶりに比べたら、
取るに足りないことである。
彼女は、頭も良く、
立場を初め、様々な点で私と似ていた。
だけど、性格は少し違うかった。
彼女はおおらかで、さばさばした女の子だった。
私たちは、親友で、良き好敵手だった。
中学生になって出会ったのだが、
ずっと前から知り合いだったような気もしていた。
ただ…
神坂先生についての意見で、
彼女があんなことを思っていたなんて
正直想像もつかなかった。
彼女もまた、
神坂先生は良い人だと
思うのではないだろうか
と思っていた。
残念ながら、彼女とはクラスが違うので
彼女が神坂先生の社会を受けることはないのだが、
神坂先生のことを、
「分からない人」だととらえていた人間が他にもいて
少しホッとしたのは事実である。
自分をひねくれ者だとは
思いたくなかったから。
そんなことを、
彼女の寝顔を見ながら考えていると、
開きっぱなしにしていたドアの方に
人影が見えた。
先生だろうか…?
と思って、顔を上げたままでいると、
翔野が、ふらりと姿を現した。