「こんにちはー」


ベンチの方へ向かっていると、

後輩の1人がこちらに気づいた。


それと同時に、皆がこちらを振り向く。



「先生、今話していたキャプテンの榛名さんです」


美月が言う。



‘積極的に話しかけたいんだなぁ’

と、私は心の中で苦笑する。



「君が、キャプテンの子かい?」


少し低い、でも、柔らかい声。



「今日から、ソフト部の顧問になった、

 神坂だ


 まだ分からんことだらけやから、

 色々聞くと思うが、よろしくな」



ベンチからすっと立ち上がって、


今までずっと彼に話しかけていた

他の部員たちの間を通り抜け、


少し離れた所にいた私の方へ、

彼はゆっくりと、歩いてきた。


笑みを浮かべながら。



「はい、よろしくお願いします」


私は笑えなかった。



何の理由もなく、

今が初対面のはずなのに、


目の前にいるこの人を、


‘怖い’と、そう、思った。



‘この人は、どこか冷めている’


そう、思ったのだ。



確かに、皆が先ほど話していたように、

この人は格好良い人だといえるだろう。


さわやかな顔立ちをしていて、若い。

それでも、しっかりしているように見え、好印象を与える人だ、


普通なら。



だが、その時、私はこの人が怖かった。



「じゃあ早速、いつもみたいに練習してくれ

 最後に、自己紹介してもらおうと思ってるから」



「…はい」



私は、言葉すくなに、皆を促した。