走っていく彼の背中を目で追っていると、
3ヶ月前のことが思い出された。
―付き合い始めて3ヶ月。
告白されたのは、冬休みの最後の日だった。
塾で自習している時に、たまたま二人きりになって、
結局その日は最後まで二人きりで、
夜になって、一緒に帰ろうか、って話になって…。
翔野から告白されたのは、その時だった。
翔野はとても真面目な子で、
勉強も頑張っていたし、サッカー部のキャプテンでもあった。
背は、男子の中では高い方ではなかったけれど、
結木よりは高く、また、さわやかな顔立ちをしていた。
彼が自分のことを意識してくれているのは
何となく分かっていた。
そのことは嬉しかったが、
私は、自分が冷めた人間だということも、分かっていた。
翔野のことを、何とも思っていなかったわけではない。
彼のことは一番気になっていたし
付き合えた時も、‘嬉しい’と、そう思った。
だけれども、翔野と私の、お互いのお互いへの気持ちを比べると、
きっと翔野の方が、大きかったに違いない。
翔野もそれを分かっているはずだった。
彼に告白された時、
‘それでもいいなら’と、 彼を受け入れたのだから。
ただ、人間は、頭では分かっていても、
心では受け入れられないということもある。
自分の気持ちの方が大きいと、
私たちの気持ちには温度差があると、
自分の身で実感していた彼からは、
不安の影は消えてはいなかったのだろう。
私はいつも、彼を不安にさせていたのだ。
彼をとらえていた言いようのない不安を、
私は取り除くことが出来なかった。
むしろそれを大きくさせてしまっていた。
でも、ただひとつ言えるのは、
あの頃、
あの時の翔野が思っていたよりもずっと、
私は彼のことが、好きだったのだ。