ベンチの周りに集まるメンバーたちの間から、

多分、神坂先生なのだろうと思われる人の頭が

見え隠れしている。



‘女子のパワーってすげぇなぁ…’


と半ば感心し、半ば呆れつつ、

私はその光景を眺めていた。



そんな時、



「結木」


と急に後ろから声をかけられて、

私はびくっとしてしまった。



「あ…あぁ、翔野…

 びっくりするやんか…」



「悪い悪い、


 てかさ、おまえんとこのメンバー、

 何に群がってるの?」



彼が、訝しげな眼で、ベンチの方を見る。


それにつられて、私も彼から眼を離し、

もう一度、そちらを見た。



「あぁ、今日から新しい先生が

 来るみたいだから


 神坂先生だっけ、

 結構若くて、格好良いらしいね」



「結木は、

 あの中に入らないのか」



面白そうに、からかい口調で言葉を発する彼を

ちらっと見ると、


彼の眼は、笑ってはいなかった。



「あの中に入る気はないよ


 だけど、もう5分前やけん、

 行かないかん


 翔野も、もう部活始まるんやろ?」



「あぁ、今日も一緒に帰れる?」



彼が少し照れたように、

でも真っ直ぐに眼を見つめて聞いてくる。


多分、彼は、神坂先生を、

無意識のうちに意識していたんだと思う。


そう、彼自身、自分が、神坂先生のことを

意識しているなんて気付いていなかったんだろう。



でも、私には何となく分かった。


新しく来た、若くて格好良い神坂先生。

しかもソフト部の顧問。



彼は、心配していたんだろう、


私と神坂先生の間に、

何かが起こるかもしれないということを。



私と、私はその時が初対面だった神坂先生との間に。



今から考えると、

彼は何かを感じ取っていたのかもしれない…。



「勿論、帰れるよ


 先に終わったら、いつも通り

 図書室で待っとるけん」




私はそう返した。


すると彼は嬉しそうに笑って

駆けて行った。


私は彼の態度が少し気になったが、

深く考える時間もなく、

メンバーが集まるベンチへ、足を向けた。