私の冷めていく気持ちを余所に、

メンバーたちの会話はヒートアップしていった。



「彼女いてるんかなぁ?

 あれだけ格好いいもんねー!」



冗談のように言っているが、

彼女の眼が真剣だったのを、私は見逃さなかった。



「目が真剣だよー、美月」



からかい半分で私は、その彼女、桜井美月に

話しかけた。



私自身、美月はこれを、

軽く受け流すと思っていたのだが、


そうはならなかった。



「ちょっと美月、真っ赤だよ!」



私は唖然として、彼女を見つめた。


皆が一斉に美月の方を向く。

美月は弁当を食べる手を止め、じっとうつむいていたが、

徐に話し出した。



「春休みに、一度会ったことがあるの…」


「神坂先生と?」


副キャプテンの子が話しかける。



「うん、部室の鍵を返しに行った時ね、

 1職、鍵がかかってたんだ…


 すごく困ってさ…

 1職の前をうろうろしてたら、声掛けられてん」



「神坂先生から?」



「そうなの…


 『君、どうしたの?』って聞かれて、

 鍵を返したいってことを伝えたら、


 『今、先生方、会議中なんだ

  俺、書類を取りに来たんだけど、

  …あれだったら、返しておくよ』


 って言ってくれてん」



「それでそれで?」



皆、真剣に聞き入っている。

私はそんな会話に、黙って耳を傾けていた。


話に入る気もなかった。


だって、神坂先生の姿なんて、

ぼんやりとしか見たことがなかったから。



外見や内面という、判断材料がないのに

人は人を判断することなんて出来ない。