始業式も終わり、新しい教室に戻ると、

ホームルームの時間となった。


今日は午前中で終わりだが、

この時間に、委員や係を決めてしまうのである。



「まず、プリント類、一気に配るからなー」



この3年4組を担当する、柴川先生が、

声を張り上げる。


と同時に、お喋りが少し治まった。


柴川先生は、30代後半の数学の先生で、

サッカー部の顧問をしている。


玄人と素人の挟間にいるような先生だが、

その声はよく響くので、生徒をまとめるのは上手い。


また、生徒からの信頼も厚い先生だ。


私の通うこの中学には、所謂「不良」もそこそこいたが、

その子らも、この先生には従順な姿勢を見せることが多かった。



「すまんが、前の席の人、 何人か、

 手伝ってくれ

 教科書も配らないかんから」



一番前の席の子たちが、柴川先生と一緒に

プリント等を配り始める。


私は、後ろから2番目の席だったので、

それを、ぼーっと見ていた。


が、あまりにも多くの配布物がまわってきたため、

すぐに現実に引き戻された。



やっと、すべてが配り終えられた頃、



「まず、一番最初に配った、学年便りと、

 クラス便りを出してみてくれ」


と柴川先生が、そのよく通る声で言った。



私は、他の子と同じように、

机の上に積み重ねられたプリントや教科書の下に

埋まってしまったその2枚の「便り」を、発掘した。



「今月のクラス便りには、このクラスの名簿と、時間割、

 あと、それぞれの科目の担当教員を載せてあるから、

 また見ておいてくれ」



そのプリントに目を通した私は、一瞬、

自分の目を、疑った。



私が驚いたのは、


国語の担当が、

学年いち恐れられてる先生だったからでも、


英語の担当が、

3年間変わらなかったことでも、


なかった。



私は、「社会」の担当教員の名前から、

目を外すことが出来なかった。



それは、その名前は、さっき体育館で、

校長が呼んでいた名前だった。



「神坂啓悟」



それが、彼の名前だった。



私は、プリントに書かれたその名前を、

右手の人差指で、ゆっくりと、なぞった。