あの人を初めて見た時に、抱いた印象は、
「黒い人」
ということだった。
これは、彼の中身がどうとかというのではなくて、
見た目がそうだっただけだ。
私があの人を初めて見たのは、
中学三年の、始業式だった。
その日は綺麗に晴れていて、
でもまだ少し肌寒いくらいだった。
校長の話が長くて、それに飽きていた私は、
体育館の開け放された窓から見える青空を眺めていた。
‘はやく、終わらないかな…’と思いつつ
ステージの方に目を向けると、
いつの間にか、校長の話は終わっていたようで、
何人かの先生方が、壇上にいくつかのパイプ椅子を並べていた。
「では、新しくこの中学に来られた先生方を
紹介したいと思います」
校長がそういうと同時に、
9人の先生が、ぞろぞろと壇上に上っていった。
その中に、彼もいた。
その時私は、眼鏡をかけていなかったし、
また、3年生は体育館の後ろの方に座らされていたから、
どの先生も、ぼんやりと、その輪郭くらいしか、
見えなかった。
だけど、そんな中で、あの人が印象に残ったのは、
あの人が、私が所属するソフトボール部の新顧問だと
紹介されたということもあったけれど、
あの人の、黒い、まるで影のようなその姿が、
一際、際立って見えたからだ。
あの人は、黒いスーツ姿でいて、
そして、それは、
とても自然なことのように、思えた。