数十分後、小暮と結木は、
海がすぐ近くに見える広場を訪れていた。
平日の、まだ午後1時半頃だから、人も少ない。
それでも何人か、釣りをしたり散歩をしたりしている人がいるが、
結木たちの方に目を向けてくるわけでは、なかった。
それは、まるで、皆、自分の世界というものを、持っているように見えた。
「座ろうか」
少し影になっている、海が正面に見えるベンチに、
2人は腰掛けた。
柔らかい風が頬を撫で、潮の匂いがした。
「ちょっと、待ってて」
小暮は徐に立ち上がって、走って行った。
そして、すぐに戻ってきて、手を差し出した。
「はい、ミルクティで良かったかな?」
結木は手を差し出しながらも、
「あっ…ありがとうございます…」
と少し戸惑った。
しかし、同時に自分の心の中に、
ある種のあたたかさが芽生えていることにも気付いていた。
‘この人になら…’
結木は、‘あの人’の話を、
今まで誰にもしたことが、なかった。
するつもりも、なかった。
自分の心の中に、しまっておけばいい。
そう思っていたのだ
しかし…今は…
「もう…5年も前のこと、なんですよ…」
結木は、口を開いた。