白い悪魔
二人のオヤジが昔話に花を咲かせる間に、アミールはタバコに火をつけ口に咥え席をたつ、棚の上のグラスを取りオヤジ達の前にグラスを置くと並久とバーボンを注ぐ。
「檜村はアミールとは初対面だったな、彼女は美人で凄腕のハンター料理の腕も凄腕だ」
東堂は笑いながら檜村を見て、目の前のバーボンを一息で飲み干す。
「仲間達から噂は聞いているよ」
そそがれたグラスを手に取ると檜村はアミールを見る。
「アミールお前さんの狙撃銃の口径は?」
「9ミリから熊用に私がカスタマイズした特別な弾丸なの?」
アミールは檜村に向かってニヤリと微笑む、檜村は納得したように。
「そいつで30頭近く倒したとはな!」
「檜村さんほどでは、伝説聞いてますよ感動しました見習いたいです」
檜村が苦笑いする。
アミールは日本に来てから自分が変ってしまった事をなんとなく感じている、野暮ったいセリフを平気で言うようになった自分に驚いている、1年前の自分ならこんな言い回しはしないだろう。
アミールはドラグノフをケースにしまうと、バーボンを一気に飲み干す。
時が立つにつれ東堂達とアミールは打ち解け、檜村がポツリとアミールの故郷を聞いてきた、檜村はアミールが時折見せる青い瞳の奥に暗い闇を見透かしていた、
さらに檜村は日本に来た経緯なども尋ねる、アミールは用心深く嘘と事実を混ぜながら話をする。バーボンが半分ほどになった頃。
店に猟師仲間が数人やってきた、奥で飲んでいる檜村達を見つけると挨拶もそこそこに、アミール達三人を囲み酒盛りが始まる。
数時間後、最近の熊の動向について話しが及ぶと、F地区から来た年配の猟師が、
「檜村さん奴が現れたらしい」
一瞬その場の空気が張り詰めた静けさの中、口を開いたのが檜村だった
「奴が消息をたってから1年ぶりか、それで被害は」
「牛が三頭食われた、どうやら奴は赤岳に向かっている様だ」
檜村と東堂は顔を見合わせると、
”来るなここに“
同時に口を開く二人の表情が険しいので、アミールは体の内側から湧き上がる火のような高揚感が駆け巡るのを抑えきれすにバーボンを煽る。
「奴とは、何者ですか」アミールが鋭い声でその猟師に問い詰める。
「白い悪魔だよ」
鬼気迫るアミールに押されながら、猟師が答えたさらに、
「二日前カムイが犬と一緒に奴を追い山に向かった」
「カムイ?あのアイヌの若造か、無茶しおる」
東堂の顔が曇る、
“厄介事が増えたな”
心の中で呟くと檜村と事務所に消える。
残された猟師の一人がアミールに、白い悪魔について語り始める。
“奴の体毛は灰色で白毛が多く、目撃者は離れた所から見た為か白い熊に見えたそうだ、
体長は大きく2メートルはあると言う、片目が無いので普通の熊とは性質が違い気が荒く人を憎んでいる、それに頭が良い!”
隣で聴いて居た若い猟師が自分の銃取り出し、
「こいつはレミントンの最新のライフルだが奴に二発撃ったが、当たりもしない距離は200メートルはあった、奴は振り返り俺を睨みつけたよ片目で!」
「あんたも気を付けた方がいいよ、最近エトロでロシア人らしいハンターが現れたと、そんな噂を聞いた」
彼女の平穏な生活は突如として揺らぐことになる。
北海道に狙撃者が現れ、新たな脅威が迫っていた。
アミールは過去の闘いから学んだ経験と、KAZUから受けた訓練を駆使して、再び立ち向かう覚悟を決める。