レジェンド現れる
レジェンド現われる
✖️✖️✖️✖️年冬朝日岳 am8:24
雪深い山林で息を潜めて獲物を待つ事はアミールにとって辛いものではない、雪深い獣道を見下ろす丘ノ上に隠れ潜んで1時間がたつ両足の感覚がマヒして来るのを感じていた、
顔には雪が降りそそぎ振り払うのももどかしいが視線を獣道に移すと空気が張り詰めるのを感じスコープを覗く、風も無い笹藪の中で葉が揺れ僅かな雪が落ちた、
冷えた体に緊張が走るドラグノフの照準を合わせると、そこに現れたのは熊ではなく大きな牡鹿が姿を見せた大物だ、息を止め柔らかく引き金を引く鋭い銃声が林の中を切り裂く。
ここ大雪連峰は野生動物の宝庫で主に鹿、熊等が生息している冬になるとアミールは猟を楽しんでいた、これも仕事のうちだ異常に増えた鹿の駆除も依頼されていた。
自衛隊の払い下げジープに鹿を積み山を下る市内の廃棄処理業者に鹿を渡すと、いつもの温泉で冷えた体を温めるそれがアミールのルーティン。
S市には旧メイン通りに銃砲店が
1軒だけあった、そこでは大抵の物が手に入る、夏が近づくと近隣の市や村から猟師たちが銃のメンテナンスの為に店にやって来る。
新しい銃等が入荷していると顔見知りの男たちが店の一角に集まり銃談義に花を咲かせる、店にはメンテンンス用のスペースがあり高いスキルを持った若い店員が二人いてその作業に当たっている。
アミールも時折、店に立ち寄り猟師仲間たちと交流していた。
粉雪が風に舞う心地よいある日にレジェントと言われる伝説の猟師檜村が店にやって来た、眉間にシワを寄せ店内を見回し息を吐く、カウンターで銃の手入れをしているアミールを見て少し驚いた表情をしたが白髪頭をかきながら話しかけてくる。
店内では古いラジオから北島三郎の風雪流れが旅が流れている。
「お前さん見たところロシア人に見えるけど、日本語は話せるのかい」
「はい、母親が日本人でしたので」
面倒くさいのでアミールは嘘をついた。緋村は何も答えず頷いただけで薄汚れたジャンパーからタバコを取り出し1本出しアミールに勧めると、檜村も口にくわえたタバコに愛用のジッポーで火をつける、
満足そうに深く吸うと静かに白い息と共に吐き出す。
そこへ店主の東堂がやって来る、二人の顔を見ながら手に持っていたバーボンを無造作にテーブルに置くと太いしゃがれた声で。
「檜村久しぶりだな、1年ぶりか、まだまだ、くたばりそうもないな」
