いつでも旅は楽しい話ですが、今回は人生を考える旅についてお話ししたいと思います。本来旅の楽しさは新しい風景や人との出会いから自分を振り返ってみるヒーリング時間を持つことだと思います。そしたら「人生を考える旅」ではどんな風景とどんな人が待っているのでしょうか。

 

 少し重い話になりますが、黒と白の二匹のネズミなどの喩えによって、「人が生きていること」の姿が説かれた『仏説譬喩経』を脚色したお話しをしたいと思います。

 

 

 

■ 人生を考えるお話し ■

 

それはある寂しい秋の夕暮れのことだった。どこまでも果てしない荒野を、一人の旅人が頼りない足取りで道を急いでいた。ふと旅人は雑草の生い茂る道に、白いものが散らばっているのを見つけた。目を凝らしてよく見ると、それは人骨だった。

 

 この白骨はいったいどうしてこんなところにあるのだろう。旅人が考えを巡らせていると、突然恐ろしい咆哮が前方から聞こえてきました。それに続いていかにも凶暴そうな虎が狂ったように突進してきます。旅人はにわかにこの白骨の由来を悟り、きびすを返して逃げ出しました。

 

 慌ててしまったため、旅人はいつしか方角を見失ってしまい、こともあろうに崖っぷちに逃げ込んでしまいます。切羽詰まった彼は崖の上にある松の木に目を止めると、背負っていた袋の中から長いロープを取り出しました。そしてためらうことなくロープを松の木に結び付けると、ロープにしがみついて崖の下に向かって降りてゆき、虎の鋭い爪を逃れました。

 

 虎は崖の上で狂ったように吠えている。ああ危なかった!運よく松の木があって、たまたまロープを持っていたおかげで命拾いをした。旅人は喜びに胸をなでおろし、取り乱した気持ちもいくらか落ち着いてきました。しかし、自分の足の下を見下ろしたとたん、思わず叫び声を上げずにはいられなかった。なんと彼の足の下に広がっているのは、大波逆巻く、どこまでも続く海だったのである。旅人は驚きのあまり全身冷や汗でびっしょりになりました。

 

 おまけに救命ロープの松の木の結び目辺りに白と黒の二匹のネズミが姿を現し、一緒になってその結び目をかじり始めた。旅人は死に物狂いでロープを揺すり、ネズミを追い払おうとしました。しかし、ネズミたちは全く動じる気配はありません。彼は絶望しました。自分を揺すってしまっため、松の木の枝がみしみしと音を立て始めたのです。

 

 この時、彼は目の前に真っ赤な野生の果実があることに気づきました。手を伸ばしてその一つを掴むと、口の中に放り込みました。ああ、おいしい!旅人は甘いその味わいにうっとりし、自分の置かれている危険な境地さえも忘れてしまいました。再び手を伸ばして、二つの果実を掴み…

 

 

 

 この話の喩を考えてみます。

 

  • 旅人: 旅人の物語とはあなた自身の物語であります。私たちは誰もがみな人生における旅人なのですから。
 
  • 荒野: 荒野はあなたの寂しい人生を象徴しています。誰もが生まれたときから、それぞれの人生を旅しています。そうである以上、自分の目的地を知っていなければなりません。自分が何をすべきかわかっていれば、見渡すかぎりの荒野もたちまちうららかな日の光、美しい花の咲き乱れる地に変わるでしょう。しかしもし自分が何をすべきかわかっていなかったら、自分の進むべき方向が見つからなかったら、闇雲に探し求めているうちにぞっとするような底なしの寂しさをつぶさに経験し、この無知な旅人と同じ運命になってしまいます。
 
  • 秋の夕暮れ: 秋の夕暮れは人生における孤独な寂しさの比喩であります。親戚や家族、友達であっても、あなたのことを理解できるわけではありません。世の中には思い通りにならないことが多く、人に言えることは少なく、自分にとって心の友を見つけることもできず、心中を打ち明けることもできない。夫婦であっても、必ずしも気持ちが通じ合っているわけではない。人生の孤独とは、すなわちこの心の孤独である。あなたはまるでひとりぽっちで人生の旅路を走っているようなものなのであります。
 
  • 白骨: 道端の白骨は死んだ者の遺骨であります。人生における旅の途中、常に家族、親戚、友達の死に出会います。同類相哀れむように、あなたはこの白骨におびえる。いつかは自分もこんなふうに骨になることを意識するためです。
 
  • 虎: 餓えた虎は死の危機を象徴しています。死は逃れられないものであります。死という虎といつのっぴきならないところで出会うかわからない。いま、この凶暴な虎が突進して来たら、あなたはいったいどう対応するだろうか。勇敢に立ち向かい、力の限り、力尽きるまで格闘するか、それともきびすを返して逃げ出すか。
 
  • 崖っぷち: 断崖絶壁は戻れない袋小路の象徴であります。もし選んだ方向が間違っていたら、あなたの行く道はすべて断崖絶壁に通じています。
 
  • 松の木: 崖の上の松の木は、金銭、財産、名誉、地位などを象徴しています。だから、あなたは必死になってそれを掴むのです。太い木の枝を掴んで、生きてゆくことを期待しているからです。
 
  • ロープ: ロープはあなたの時間を象徴しています。あなたが長く生きられると思っている分だけ、ロープは長くなります。だから、二十年であろうと、三十年であろうと、はたまた四十年であろうと、そのロープはあなたの想像の中のロープなのであります。いま、あなたがロープを縛りつけたのは松の木のどの枝だろうか。金銭?資産?名誉?それとも地位?最も切羽詰まった時にその枝が突然折れてしまったらどうなるか考えたことがあるだろうか。追い詰められれば追い詰められるほどあなたは必死にあがき、その枝はあっさりと折れてしまうことになります。
 
  • ネズミ: ひたすらロープをかじり続ける白と黒のネズミは、昼と夜を示しています。昼と夜が代わるがわるあなたのロープをかじり続け、最後にはちぎれてしまいます。
 
  • 深い海: 枝が折れようと、ロープがちぎれようと、あなたは逆巻き荒れ狂う海に落ちてしまいます。深い海に落ちてゆくこと。それは死であります。
 
  • 野生の果実: 真っ赤な果実はあなたの欲望を誘惑しています。享楽をむさぼり、自分の欲望を満足させたいがために、自分が危険な境地に置かれていることすら忘れてしまう。そう、枝は折れ、ロープもちぎれてしまう前に自分では賢い選択だと思い込み、どうせ死ぬなら、その時に味わえる楽しみを享受すべきではないか、と。
 
  • 野生の果実以外の思考: 見渡すかぎりの荒涼とした野原から真っ赤な野生の果実まで、そこには私たちの無知な世俗的人生が描かれています。だがこの過程において、枝が折れる前またはロープがちぎれる前に、悟りさえすればいつでも、自分の罪を償い、死を超越できるということを考えたことはないだろうか。
 
 

 私たちは、このように知って、世間の楽に心奪われることなく、人生の無常に思いをいたして、苦悩の解決を求めていかなければならないのです。そのためには一生、自分の考えや行動を記録・管理し、自分を客観的に評価・分析して向かうべき道を歩まなければなりません。その旅に必要なツールとしてマインドマップにプランナー機能を加えたThinkWisePlannerは考えやスケジュールの記録・管理は勿論、ガントチャートを利用したプロジェクト管理で個人の人生計画や実行管理に役立ちます。