判決が呼び水 鞆の浦に人波 「ポニョブームよりすごい」/YOMIURI ONLINE
広島県福山市の景勝地・鞆(とも)の浦の埋め立て・架橋事業を巡り、県知事に埋め立て免許の差し止めを命じた1日の広島地裁判決の後、地元に全国から観光客が押し寄せている。判決が歴史的景観を「国民の財産」と認めたのが呼び水となった格好で、観光に携わる人たちは「いい宣伝になった」と歓迎。だが、マイカーでの来訪が増え、町の狭い道路は週末、いっそう混雑し始めた。混雑解消を狙う事業に待ったをかけた判決の影響は、地元にとって「痛しかゆし」となっている。
3連休の初日となった10日。鞆の港には、家族連れやカップルらが立ち寄り、シンボルとなっている江戸時代の石造りの常夜灯(灯台)の前で記念撮影をしたり、階段状の船着き場・雁木(がんぎ)に腰掛けて海を眺めたり。
東京都八王子市の会社員七海陽子さん(55)は「裁判で知った景観を見に来た。のんびりしていい所」と言い、千葉県習志野市の会社員西村竜一さん(28)は「都会にはない風景を残してほしい」と話した。港近くの、江戸情緒を残す町並みを散策する人も、日暮れ近くまで絶えなかった。
1日の判決は、景観保護を理由に公共事業の差し止めを初めて命じた判決として報じられた。鞆でアニメ映画「崖(がけ)の上のポニョ」の構想を練った宮崎駿監督が、判決についてコメントしたこともあって、直後から、県外ナンバーの車が目立つようになった。
幕末に鞆に滞在した坂本龍馬の足跡を紹介する「いろは丸展示館」には、普段の倍以上が来館。4日は、1989年の開館時に並ぶ約550人に上った。赤松宏記館長は「『埋め立て予定地はどこ?』といった質問をする人も多い」と判決の影響を驚く。
市の施設・鞆の浦歴史民俗資料館も入館者が通常の2~2・5倍に増え、近くの土産物店は客であふれる。男性店長(46)は「ポニョブームに沸いた昨年の夏よりすごい人。もっと商品を増やさないと」と喜ぶ。
こうした人気に、埋め立て・架橋事業を推進する市の関係者らには複雑な思いもあるという。だが、市観光協会の平靖行事務局長は「判決はどうあれ、鞆の浦の名前がまた全国に広まった。チャンスを逃さず、魅力を広めたい」と期待する。
一方で、町の狭い道の混雑は週末にひどくなった。県道沿いに住む女性(66)は「観光客の車が立ち往生しているのをよく見る。景観を守るのもいいけど、何とかならないか」と嘆く。
訴訟の原告団長、大井幹雄さん(69)は「観光客が増えたのはうれしいが、受け入れの準備不足は否めない。交通整理などが今後の課題だ」と言う。また、推進派住民団体代表の大浜憲司さん(61)は「鞆を観光で活性化したいとの思いはあるが、渋滞や騒音など生活に支障が出始めた状況は行政に訴えたい」と話している。
(2009年10月11日 読売新聞)
3連休の初日となった10日。鞆の港には、家族連れやカップルらが立ち寄り、シンボルとなっている江戸時代の石造りの常夜灯(灯台)の前で記念撮影をしたり、階段状の船着き場・雁木(がんぎ)に腰掛けて海を眺めたり。
東京都八王子市の会社員七海陽子さん(55)は「裁判で知った景観を見に来た。のんびりしていい所」と言い、千葉県習志野市の会社員西村竜一さん(28)は「都会にはない風景を残してほしい」と話した。港近くの、江戸情緒を残す町並みを散策する人も、日暮れ近くまで絶えなかった。
1日の判決は、景観保護を理由に公共事業の差し止めを初めて命じた判決として報じられた。鞆でアニメ映画「崖(がけ)の上のポニョ」の構想を練った宮崎駿監督が、判決についてコメントしたこともあって、直後から、県外ナンバーの車が目立つようになった。
幕末に鞆に滞在した坂本龍馬の足跡を紹介する「いろは丸展示館」には、普段の倍以上が来館。4日は、1989年の開館時に並ぶ約550人に上った。赤松宏記館長は「『埋め立て予定地はどこ?』といった質問をする人も多い」と判決の影響を驚く。
市の施設・鞆の浦歴史民俗資料館も入館者が通常の2~2・5倍に増え、近くの土産物店は客であふれる。男性店長(46)は「ポニョブームに沸いた昨年の夏よりすごい人。もっと商品を増やさないと」と喜ぶ。
こうした人気に、埋め立て・架橋事業を推進する市の関係者らには複雑な思いもあるという。だが、市観光協会の平靖行事務局長は「判決はどうあれ、鞆の浦の名前がまた全国に広まった。チャンスを逃さず、魅力を広めたい」と期待する。
一方で、町の狭い道の混雑は週末にひどくなった。県道沿いに住む女性(66)は「観光客の車が立ち往生しているのをよく見る。景観を守るのもいいけど、何とかならないか」と嘆く。
訴訟の原告団長、大井幹雄さん(69)は「観光客が増えたのはうれしいが、受け入れの準備不足は否めない。交通整理などが今後の課題だ」と言う。また、推進派住民団体代表の大浜憲司さん(61)は「鞆を観光で活性化したいとの思いはあるが、渋滞や騒音など生活に支障が出始めた状況は行政に訴えたい」と話している。
(2009年10月11日 読売新聞)