高まる内外の評価
10月21日、中国・西安。文化財の専門家約500人が出席した国際記念物遺跡会議(イコモス)総会で、「鞆(とも)港の埋め立て・架橋計画の中止を求める決議」が全会一致で採択された。
きわめて異例の決議を、日本の国内委員会委員長、前野まさる・東京芸大学名誉教授(73)は複雑な気持ちで見守った。
「鞆港が国際的な評価を受けたと同時に、危機を見過ごしてきた我々への叱責(しっせき)でもあった」
◇ ◇
イコモスは約120カ国が参加するユネスコの諮問機関で、世界遺産の調査・評価をするNGOだ。
実は昨年10月に愛媛で開かれたイコモスの国際専門分科会でも、計画中止を求める「鞆宣言」が採択されていた。
提案者は、豪メルボルン大学のマイルス・ルイス教授。
鞆のことは同僚や知人から聞いて知っていた。会議に先立ち、鞆まで足を延ばした。町並みや背後の山と一体となった港湾の美しい景観に心が奪われ、保護の必要性を痛感した。
西安での総会決議を受け、ルイス氏は11月26日、福山市と県に架橋計画の見直しを要請するため、急きょ来日した。
鞆をあらためて視察し、28日には前野さんやドイツ、韓国などの代表とともに県庁で中川道弘・道路総室長らに面会。
「解決策は一つだけではない。よりよい道へ進んで観光が盛んになり、経済的持続力がつくよう願っている」と訴えた。
2泊3日の強行スケジュールだったが、「決議したイコモスの責任を果たしたかった」という。
◇ ◇
前野さんらは文化庁長官や国土交通省幹部にも面会し、鞆の価値を訴え続けた。
福山にも何度も足を運んだ。
手弁当の活動だ。
「誰かが頑張らないと遺跡なんて残らない。
朝鮮通信使が立ち寄った他の地域とセットなら、世界遺産となる可能性も十分にある」
国内外で鞆への評価が急速に高まることに、架橋計画を進める行政側は困惑気味だ。羽田皓(あきら)市長はイコモス代表らとの会談後、「評価されてうれしい」としつつ、「活性化のため架橋は必要。
世界遺産になる保証が百%あるのか。
橋ができても朝鮮通信使が来た実績は消えない」と強調した。
県の担当者もイコモス代表らに「港は時代の要請に応じて変化してきた」と反論。
面と向かっては言わなかったが、「そんなに貴重だというのなら、自分たちで住民を説得すればいい」とつぶやいた。
◇ ◇
「鞆のことを知らん外もんのくせに」。
研究者らが架橋計画見直しの声をあげるたびに、計画推進派からはこんな批判が飛び出す。
行政の担当者も「外の人だから」としばしば口にする。
だが、船の修理場の焚場(たでば)や階段状の船着き場の雁木(がんぎ)など、江戸期の特徴的な港湾5施設が鞆だけに残るという事実を突き止めたのは、ほかならぬ「外もん」の日本大学都市環境計画研究室だった。
「外もん」たちの地道な調査が鞆の価値を一挙にはね上げ、訪れる人を増やした。
それがまた住民らの町への愛着を高め、誇りを醸成する。
そんな鞆の文化的な価値は架橋・埋め立てで決定的に損われると、イコモスは見る。
そして、活性化のためには架橋しかないという硬直化した発想に警鐘を鳴らす。
たとえば、イタリアの港町アマルフィ。
世界遺産登録を追い風に経済投資を集め、世界有数の観光地に成長した。
前野さんは呼びかける。
「イコモスには保存と開発を両立させるノウハウと実績がある。
知恵を出し合って整備すればよい。一度壊したら、もう元には戻らないのだから」
2006年12月18日
__________
鞆の浦検定は架橋埋立計画に対し、賛成も反対もしておりません。
鞆の浦に住むすべての人が、
幸せになれる方法を常に考え続けています。
いわゆる「外もん」の方々の地道な活動があり
今、鞆の浦は見つめなおされている
この「外もん」という表現を根絶したい
観光地なのだから・・・
それこそが、
鞆の浦検定の大きな主旨のひとつであり、
身の置きどころでもある
きわめて異例の決議を、日本の国内委員会委員長、前野まさる・東京芸大学名誉教授(73)は複雑な気持ちで見守った。
「鞆港が国際的な評価を受けたと同時に、危機を見過ごしてきた我々への叱責(しっせき)でもあった」
◇ ◇
イコモスは約120カ国が参加するユネスコの諮問機関で、世界遺産の調査・評価をするNGOだ。
実は昨年10月に愛媛で開かれたイコモスの国際専門分科会でも、計画中止を求める「鞆宣言」が採択されていた。
提案者は、豪メルボルン大学のマイルス・ルイス教授。
鞆のことは同僚や知人から聞いて知っていた。会議に先立ち、鞆まで足を延ばした。町並みや背後の山と一体となった港湾の美しい景観に心が奪われ、保護の必要性を痛感した。
西安での総会決議を受け、ルイス氏は11月26日、福山市と県に架橋計画の見直しを要請するため、急きょ来日した。
鞆をあらためて視察し、28日には前野さんやドイツ、韓国などの代表とともに県庁で中川道弘・道路総室長らに面会。
「解決策は一つだけではない。よりよい道へ進んで観光が盛んになり、経済的持続力がつくよう願っている」と訴えた。
2泊3日の強行スケジュールだったが、「決議したイコモスの責任を果たしたかった」という。
◇ ◇
前野さんらは文化庁長官や国土交通省幹部にも面会し、鞆の価値を訴え続けた。
福山にも何度も足を運んだ。
手弁当の活動だ。
「誰かが頑張らないと遺跡なんて残らない。
朝鮮通信使が立ち寄った他の地域とセットなら、世界遺産となる可能性も十分にある」
国内外で鞆への評価が急速に高まることに、架橋計画を進める行政側は困惑気味だ。羽田皓(あきら)市長はイコモス代表らとの会談後、「評価されてうれしい」としつつ、「活性化のため架橋は必要。
世界遺産になる保証が百%あるのか。
橋ができても朝鮮通信使が来た実績は消えない」と強調した。
県の担当者もイコモス代表らに「港は時代の要請に応じて変化してきた」と反論。
面と向かっては言わなかったが、「そんなに貴重だというのなら、自分たちで住民を説得すればいい」とつぶやいた。
◇ ◇
「鞆のことを知らん外もんのくせに」。
研究者らが架橋計画見直しの声をあげるたびに、計画推進派からはこんな批判が飛び出す。
行政の担当者も「外の人だから」としばしば口にする。
だが、船の修理場の焚場(たでば)や階段状の船着き場の雁木(がんぎ)など、江戸期の特徴的な港湾5施設が鞆だけに残るという事実を突き止めたのは、ほかならぬ「外もん」の日本大学都市環境計画研究室だった。
「外もん」たちの地道な調査が鞆の価値を一挙にはね上げ、訪れる人を増やした。
それがまた住民らの町への愛着を高め、誇りを醸成する。
そんな鞆の文化的な価値は架橋・埋め立てで決定的に損われると、イコモスは見る。
そして、活性化のためには架橋しかないという硬直化した発想に警鐘を鳴らす。
たとえば、イタリアの港町アマルフィ。
世界遺産登録を追い風に経済投資を集め、世界有数の観光地に成長した。
前野さんは呼びかける。
「イコモスには保存と開発を両立させるノウハウと実績がある。
知恵を出し合って整備すればよい。一度壊したら、もう元には戻らないのだから」
2006年12月18日
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鞆の浦検定は架橋埋立計画に対し、賛成も反対もしておりません。
鞆の浦に住むすべての人が、
幸せになれる方法を常に考え続けています。
いわゆる「外もん」の方々の地道な活動があり
今、鞆の浦は見つめなおされている
この「外もん」という表現を根絶したい
観光地なのだから・・・
それこそが、
鞆の浦検定の大きな主旨のひとつであり、
身の置きどころでもある