以前日記本『無人島のふたり』を読んで

著者である山本文緒さんの言葉遣いが

穏やかさが心地よく好きだなと思っていました。

他にも読んでみたいと思って以来、

今回この本を読みました。

久しぶりに自己啓発、学び目的に選ぶ本から

気持ちがホンワカしたくなったからです。

そんなときに見つけたこのタイトルは

負けたくない、という悔し涙タイプのお話だと思っていたので

実際読むうちに泣く理由が違っている内容に

意外感を感じながらも

様々な職種に従事する女性たちが描かれる一編一編に

期待以上のホンワカを感じることができました。

オムニバス形式の短編集であるこの作品では、

それぞれが悩みながらも懸命に生き、小さな喜びを見つけ、

その中で時折涙をこらえる瞬間が描かれています。

悔し泣き、悲し泣き、嬉し泣きなど、様々な感情が

沸き上がる場面がありながら、

最後には「泣くもんか」と意地を張る彼女たちの姿に

力強さを感じました。

私自身が経験したことのない職種の女性たちの話にも

関わらず、彼女たちの心情や状況に驚くほど

共感している自分がいて不思議な気持ちになりました。

そしてこの本を読んだ後、

街中ですれ違う人やお店で見かける人たちにも

それぞれの人生があるのだろうと想像するようになり

心の中で「おつかれさま」と思うようになりました。

普段何気なく過ぎていく日常の中で

他者の人生に少し思いを馳せるきっかけをもらった気がします。

この本は特別な出来事ではなく、ありふれた日常の中に

込められた人間の強さや優しさを静かに描いており、

読んだ後には温かい気持ちと新たな視点が残りました。

山本文緒さんの洞察力と人間描写の巧みさが

この作品をただの短編集以上のものにしていると感じます。

『絶対泣かない』は、そんな誰もが共感し得る普遍的な

テーマを扱いながらも読者一人ひとりに異なる考えや

感情を与える、特別な一冊でした。