私もご多分に漏れず、長い間満員電車に揺られて東京へ通勤(痛勤)するサラリーマンでした。

生の人間が狭く混んだ空間に押し込められて問題が起こらないはずが有りません。数々の揉め事を目撃してきましたが、特に記憶に残っていることを書き残しておきます。

ある日の帰宅途中の横浜駅で乗り換えの時に発生しました。車中で隣り合った男女が揉めているようでした。年のころは、女性が50代後半、男性は40代という感じです。そのまま、横浜駅に到着したので、その二人も降りました。ホームの下り階段の手前で“事件”が起きました。二人の間には口論しているほど余裕のある空間と人の流れにはありません。

所謂喧嘩している場合ではありませんでしたので、収まったのかと思ったその瞬間です。その女性がその場に倒れこみました。そして、傍にいたその男が様子を窺うような素振りで倒れ掛かった女性の体を支えて、「駅員を呼んでくる」と叫んで、その場から離れました。つまり、その男にとって事が終えたので、人混みの中へ紛れ込み逃げ去ったのです。何が起きたかというと、その女性の斜め後ろに立ったその男は、女の横腹を激しく突き(凶器が使われたは分かりません)、その激痛で抵抗或いは被害を受けたことを周囲に訴える力は残っていませんでした。まんまとその男の仕掛けた暴力は成功(と言って良いものか憚れますが)した格好です。

一応言っておきますが、人混みの中での一瞬の出来事でしたので、少し離れた場所にいた私自身何も出来ませんでしたし、周囲の人々もそこで何が起こったかを正確に認識していた人が果たしていたのか、それともいなかったのかもハッキリは分かりません。

その後、そのことが頭から離れず、常に頭に残っております。電車の中で或いは、人混みの中で起こる突発的な出来事で、運悪くケガをしてしまうことに巻き込まれることも常に起りえます。下手をすれば、警察沙汰になる恐れもあります。つまり、不用意に加害者になることだってありえます。我々は、平穏な毎日を送っているようで、決して安泰ではないことを認識しておくべきでしょう。

平凡な人間にとって、その場の意地や面子でことを起こしてしまっては、人生を変えてしまうことだってあります。そして、時々あの横浜駅で起こったことを思い出す次第です。