ポルニャク家への訪問の翌朝。
いつも朝食をとっている部屋に入ると、カエール侯爵とジェアン伯爵がいた。
「おはようございます、カエール侯爵、ジェアン伯爵」
「おはよう、アリアネ」と不機嫌そうにカエール侯爵は言う
「おはようございます、レディーアリアネ」とジェアン伯爵は純粋な笑顔で言う「護衛兵は先に起きると思っていました」
「普通は・・・ですね」と恥ずかしがる私は言う「しかし最近遅くまで侯爵と勉強してから、確認と復習で4時まで勉強して、朝食の時間までしか睡眠取れませんから・・・」
カエール侯爵の屋敷では日が早く始まる。朝食の時間は7時。
「僕達の学生時代を思い出すね、カエール」
「ワタシ達は授業の時間まで遊ぶことが多かったな。アリアネみたいに真面目に勉強していなかったし・・・」
カエール侯爵を毎日観察していれば、疑問に思い始めることがある。真面目に勉強していなかったとか自分のことを遊び人だとかカエール侯爵は言ったりするが、ただの不真面目の貴族息子は准将軍になったり、高い爵位を得たりしないだろう。誰も見ていないところで、誰よりも努力しているのではないかと・・・。
私は座った。少しの沈黙の後、ジェアン伯爵は言い出す
「話の続き。僕は毒が良くないと思う」
「なぜ?」とティーカップを手に取る侯爵。
「毒で死んだら、フランシスのことを疑う人もでるだろう」
フランシスは第二王子の名前。私は耳を話に傾けた
「確かに。でも革命を起こしたら、、こっちがコントロールを失う可能性は高い」
「革命ほどじゃなくてもいいと思うよ。軍を使って、王と第一王子を追い払ったりすることができないか」
「軍を使ったら、軍の力で新しい王室をたたせることになる。それだけは避けたいんだ。それに突然の軍の動きがあったら、ワタシが影で動いていると思われるだろうし・・・人の恨みを買うことになる」
「しかしそれ以外の方法はないのではないか」
「王に対して、貴族も不安を感じさせればいいのでは?」
「どうやって?」
カエール侯爵は溜息をつく
「正直まだ分からない。レオナは将軍になったことによって、どんな風にバランスが変わるかまだ分からないし・・・」
「レオナを将軍にしたのはカエールのではないか」
「そうだけど、実際レオナが働き始めないと、分からないことが多い」
「カエールにも分からないことがあるんだ」とからかうジェアン伯爵
カエール侯爵は不機嫌のまま
「分からないことだらけ・・・」
「今日どうした、カエール?」
カエール侯爵は私を見る
「なぜレディーアリアネは昨日の夜から不機嫌なのか分からない」とカエール侯爵は言う
「不機嫌に見えないが」とジェアン伯爵も私を見つめる
「昨日の夜から口きいてくれないし、小言でしか返事しないし、勉強していた時に怖い顔しているし・・・」
「別に不機嫌ではありません」と私は言う
「レディーアリアネはそう言っているから、もう機嫌なおれば、カエール?」
カエール侯爵は黙ったまま、ティーを飲み続ける
「それに来月レディーアンヌと結婚するだろう。いつまでもレディーアリアネの顔色を伺っていたら・・・」
「結婚は来月だ。今は独身だから、放っておいてくれ」
「でもレディーアリアネのことをそんなに気にしていたら、愛人だとバレるよ」
「アリアネは愛人ではない」と不機嫌さは増す
「あれ?そういう関係だと思っていたが」
「キス止まりの関係だ。愛人が欲しくて、アリアネを雇ったわけではない」
「わかっている」とカエールを落ち着かそうとするジェアン伯爵ー「が、レディーアンヌとレディーアリアネを同じ屋根の下で集めると、危ないと思うよ」
「怪しまれるようなことしなければいい。護衛兵としてアリアネ以外の者を雇うつもりもない」
ジェアン伯爵は微笑む。
「カエールはそう決めているなら・・・。何か結婚生活で困ったことがあったら、相談にのるよ」
「結婚までのこの一ヶ月、アンヌはどんな人かちゃんと見ないと・・・」と侯爵は呟く
「関心のレディーアリアネから不機嫌さの理由を聞いていないんですね」とジェアン伯爵は私に問いかける
「不機嫌ではありませんよ。ただ・・・整理の時間が・・・必要です」
「言いたいことがある時に言えばいいのに・・・。ジェアンの家で何日か休んだら」
「休み要りません。護衛兵としてここにいるべきだと思います」
カエール侯爵は窓の外を見る。
分かっているつもりでいても、自分で決めたことでも、正直選んだ道は楽ではない。
「カエール、学校について送った書類を見た?」とジェアン伯爵は話題を変えようとする
「見た。新しい校長を探した方がいいと思う」
「分かった。探してみるよ」
「任せる。今結婚の事と軍の移動のことでちょっと忙しいから」
「無理しないように。もう一つの話はフランスアと会った時に、またしよう」
「兄上はいい提案があるかもしれない」
「僕は仕事があるから、これで失礼するよ」と立ちながら言うジェアン伯爵だった「そうだ、カエール」
侯爵は友人を見る
「ポルギー准将軍は殺されたという話を聞いたか」
カエール侯爵はわざとらしい咳を出す
「冗談でしょう」とジェアン伯爵は驚く
「いいえ」とカエール侯爵の顔に薄笑いが浮かぶ
「なぜ?」
「ジャン兄を・・・」
ジェアン伯爵は言葉を失う。そして座る
「レオナに頼んで、調べてもらった」
「証拠は十分あったのか」
「証拠なければ、人をやったりしないよ、ジェアン」と真剣にジェアン伯爵を見つめるカエール侯爵だった。
「しかし・・・」
「10年前のガキじゃないから、理由なく剣を人にむいたりはしない」
つづく
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