蝉の声が、少しずつ遠くなっていた。夏の終わりの風が、縁側をすうっと抜けていく。
ミオは両腕で丸いスイカを抱え、よいしょ、と縁側に腰を下ろした。重たくて、ちょっと誇らしい。
「おばあちゃん、スイカ切って!」
台所から顔を出したおばあちゃんは、目を細めた。
「はいはい。大きいの持ってきたねえ」
とん、と包丁が入ると、赤い実がぱっくり割れて、甘い匂いが広がった。ふたりで並んでかじりつく。冷たくて、少しだけ夏の味がした。
「……種、飛ばしていい?」
ミオが遠慮がちに聞くと、おばあちゃんはいたずらっぽく笑った。
「ばあちゃんに勝てたらね」
ミオは口いっぱいにスイカをほおばると、ほっぺたをふくらませて、縁側の先をにらんだ。
「いくよ……えいっ!」
ぷっ。
黒い種は勢いよく飛び出したものの、ミオの足元にぽとりと落ちた。
「あー……」
「どれ、ばあちゃんの番だね」
おばあちゃんは背筋をすっと伸ばし、口をすぼめた。ぷっ、と小さな音がして、種はきれいな弧を描き、庭の奥の紫陽花の根元まで飛んでいった。
「えー! なんでそんなに飛ぶの!?」
「60年の年季だよ」
おばあちゃんはすまし顔で言った。ミオは悔しくて、もう一口かじった。
そのとき、庭の塀の上で、何かがもぞりと動いた。茶色いしま模様の猫、ムギだった。ムギは音もなく地面に降りると、飛んでいった種のそばまで歩いていき、じっと見つめている。
「……食べないでよ、それ」
ミオが小声で言うと、ムギはちらりと振り返って、ふんと鼻を鳴らした。
やがてムギは縁側にのぼってきて、ミオのスイカのお皿に、ひくひくと鼻を近づけた。
「だめだよ、ムギ! これは私の!」
ミオがお皿を引き寄せると、ムギはしばらくミオの顔を見上げていた。それから、何事もなかったような顔で、ミオの膝の上にのぼり、くるりと丸くなった。ぽかぽかと温かい。
「ふふ、もう友達だねえ」
おばあちゃんが笑う。ミオはしばらく黙って、膝の上の小さな重みを見おろしていた。
「……しょうがないな」
ミオはスイカをひと切れ、そっとお皿の端によけた。
「半分こね」
ムギは目を閉じたまま、しっぽの先だけをぱたんと動かした。
気がつくと、空の色が変わっていた。青かった空はいつの間にか薄い橙色にとけて、遠くでひぐらしが鳴き始めている。縁側には、おばあちゃんとミオと、膝の上のムギが、並んで座っていた。
お皿の上には、スイカの皮と、ちょっぴり残った黒い種だけ。風鈴が、ちりん、と小さく鳴った。
「また来年も、スイカ食べようね」
ミオが言うと、おばあちゃんは空を見上げたまま、目を細めた。
「そうだねえ。来年は、ムギも種飛ばし大会に出そうか」
ムギは大きなあくびをひとつして、ミオの膝の上で、また丸くなった。
夏の終わりの風が、みんなの髪をやさしく揺らしていた。

実は最近台本作成とかの案件にも応募するようになって、そこから台本・シナリオ・小説とか興味が出てきたんですけど、初心者がAIでここまでつくれるなんてスゴイびっくり
自分でも少しずつ、書けるように練習しようと思います口笛