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メインイベント ディック東郷国内最終試合
ディック東郷vs外道
とうとうメインイベントです。
東郷vs外道というカードが決まった時から、名勝負への期待感にあふれていたこのカード。結論から言ってしまえば、素晴らしい闘いでした。
2人は、プロレスというジャンルにおいて最もスタンダードな形の闘いを我々に提供してくれました。お互いの必殺技をここぞの場面まで温存し、こつこつとダメージを重ねていく。その攻防の合い間合い間に光る極上の技術。
自分は、この試合を見ていてどちらかを応援する声は出ませんでした。とにかく、出るのはため息。日本が世界に誇るマスター2人の所作へのため息です。
たったひとつのリストロック、たったひとつのヘッドロックからも他のレスラーからは感じられない美しさを感じました。
さらに、2人の持つもともとの技術に加えて、向かい合う二人とそれに関わった人々の20年以上にも及ぶストーリーを重ねて見るために、より意味のあるものに見えました。
二人の極上のやり取りを見ているうちに、『外道が東郷のことをベストと呼ぶ理由』『東郷が外道を心から尊敬する理由』『二人の目指すレスリングの形』などをはっきりと感じることができます。
そして、そんな二人の闘いをリング下でじっと目を見開いて見るアントンや佐々木大輔など愛弟子達の姿、あえて赤コーナーにも青コーナーにもつかず、ニュートラルコーナーでこの闘いを見守った邪道の姿、場外乱闘の際に響き渡る篠さんの声―――
これらの全てに大きな意味があり、あの日あの時間あの場所にいた全ての人や物の中で意味の無いものなどありませんでした。
生涯フリーを貫くと思われたディック東郷の国内最終試合がDDTのロゴが入ったマットの上で行われることにも多大な意味があったように思えます。
試合後に行われた壮行会にも本当にたくさんの人が駆けつけてくれました。薬師寺さんや大鷲関まで来てくれました。そして、錚々たる顔ぶれの最後に出てきたのは、ディック東郷にとって最後のボスとなった高木“大社長”三四郎。この日の試合には出場しなかったものの、あり得ないくらいでかい花束を持って、忙しい社長業の合間をぬってきてくれました。
全てのセレモニーが終わり、最後にディック東郷がコールを受けて、ディック東郷国内引退興業は終わりました。テンカウントはありません。だってこれで終わりじゃないから。
自分は、ここ何ヶ月かをどうにもさびしい気持ちで過ごしていました。時には6・30が永遠に来なければいいのにとさえ思いました。
しかし、ディック東郷がリング上で言った「また皆さんの前に挨拶に帰ってきたいと思います。1年後か1年半後か分かりませんが、必ず無事に帰ってきます。」の言葉になんだかとてつもない安堵を覚えました。
またディック東郷が日本に帰って来てくれる。きっと今と違わぬかっこよさとたまらないオーラを纏って帰って来てくれるでしょう。そのころには僕も少し大人になって、東郷さんの引退と正面から向き合えるようになっていたらいいな。