こんにちは。
読書ブロガーのミズオチです(笑)。
タイトルの本にようやく辿り着きました。
図書館になくて、文庫化していなかったので、手の届く有名な本から読み進めて、ようやくハードカバー、買いました。
少なくともこの本に辿り着くまでに6冊、西加奈子さんを連続して読みましたので、傾向と対策は出来ています。(途中、藤沢周平とBシュリンクも同時読了しましたが)
やはり読み始めから食いつく作品ではなかった。
高校で知り合った無口な男アキはフィンランドの俳優に似ていると言った主人公の言葉により自分の存在を意識して、なりきる事でそれまでの辛く厳しい現実から生きて行こうとしました。劇団に入り、必死にもがきます。
一方、主人公の俺も父親が借金を残して急死する事から人生は低空飛行して行きます。
夢を持って就職したテレビ業界は過酷な労働状況と精神を蝕む環境から、徐々におかしくなってしまいます。
高校時代の頃、少し笑える時期を除いて、この二人の毎日は徹底的に暗い。
虐待、貧困、過密労働、格差社会。
現代の社会に蔓延する厳しい現実に心と身体が耐えられなくなって行きます。
特に主人公の俺が働く業界は僕も30年、目が見えなくなったり、胃に穴が空いたり、それなりに体力があったので今も生きていますが、過酷な経験はしました。物語にあるほど追い込まれてはいませんが、、。それでもリアルに実感しながら読み進める事が出来ました。
そんな一面にも自分を重ねながら、やはり社会の歪みに対して潰される物語が延々と続きます。
しかしラスト40ページ、会社の後輩、森さんが出てくるあたりから、一気に希望が見え隠れして、俺はボロボロになり、アキも死んでしまうのですが、最後に安らかなひとときを過ごしてこの世を去った事がわかります。
創作物に社会的拡がりのないものは意味がない。
僕は以前そう言い切っていました。
今ではそうでないものもあらゆる角度から一概には言えないと思っています。
しかし創作する側がそれを踏まえないと誰に向けたメッセージなのか、その創作物はなぜ世に出す必要があるのか、そんな事にもこだわってしまいますが、この物語にはそれがあります。
今、あらゆる状況で世の中の歪みが酷くなっています。弱者はどんどん追い込まれ、生きて行く事が厳しい現実が溢れています。
また、その厳しい現実は1%の人を除いて誰しもに訪れる可能性が高まっています。
僕らがこの物語を読んで得るものはまさにそれなんではないでしょうか。
西加奈子さん、なかなかの作家だと思います。
僕の中では今までの(好きな作家)と言う感覚ではなく、ニューウェーブ、僕の中にはない何かを表現する人。そう思いました。