私は良い人ではありません
善人でもありません
 
津波が去った後 避難した火葬場で
子供たちの命を繋ぐためなら何でもする
泥棒にでもなんにでもなる
そう思っていましたし
その必要があれば迷わずそうしたでしょう
ここに書き込むことを憚られることも本気で覚悟しました
 
津波というものは 母である私に
そのことを即決させるには充分すぎるものでした
 
語り部の際には 
私達と同じ思いを繰り返さないように
大切な人と命を守る話し合いをしてください
そのようにお願いをしていますが
その全てが皆さんのためではありません
ですから私は 良い人でもなければ善人でもないのです
 
以前にも記事に書いたり
語り部の際にもお話ししていますが
私の胸の中には 見えない蓋つきの箱があります
少しでも穏やかな日常を送るために
震災の痛みは 普段すべてその箱にしまっています
語り部をするとき 震災の記事を書く時
被災した者同士で話す時 その都度その蓋を開け
時が終わると また箱の中にしまい込むのです
 
ですが 自分で開け閉めしているはずの
痛みの詰まった箱のふたが
無理矢理こじ開けられることがあります
これは きっと私だけではなく
震災で痛みを抱えた人なら誰でもそうなのかもしれません
 
日本に限らず 
災害に巻き込まれた地を見るたび
逃げ遅れた人の情報を聴くたび
テレビの画面やラジオの声には乗らない人を想うたび
「 今 そこに あの時の自分と同じ人がいる!」
一瞬で 震災時の自分に戻ってしまうのです
抑えようとしてもこらえきれずに
じくじくと湧き上がってくる痛み
 
「 何で逃げなかった!
     何で逃げれるうちに逃げなかった!」
テレビの画面に叫び 
あの日の自分や大切な人達と重ねてしまうのです
 
私の語り部は 皆さんが想ってくださるような
尊いものではないのです
もう二度と あの日の自分に戻りたくないという欲です
喪ってしまった母や祖母 
大切な人達への取り返しのつかない後悔を
再度 なぞりたくないという欲なのです
 
「 私達のために話してくださってありがとう 」
いいえ ごめんなさい
私は 二度とあの日の自分に戻りたくないだけなのです
 
「 何か私達に出来るお手伝いはありますか? 」
有難うございます
でしたら どうか皆さんの命を守る相談をしてください
お願いですから
もう二度と 私をあの日に引き戻さないでください
 
語り部をしている私も
被災の経験がある人たちでも
次の災害でどうなるのか解らないのですから
喪いたくはない愛する人と 
災害後に生きて再開するための話をしてください
  
あなたの喪いたくない人と相談できるのは
私ではないのです
 
ご自分の命と相談できるのは
私ではないのです
 
幻滅されるかもしれませんが
これが被災して語り部を続ける私の
正直な気持ちなのです
 
私の思いを綴った記事ですが
皆様のお心に触れる何かがございましたら
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#語り部佐藤麻紀