母が見つからず
何度も何度も遺体安置所へ通ううちに
言葉にできない孤独感を知りました
 ...
周りに誰もいないから 孤独なのではないのです
話せる相手がいないから孤独なのではないのです
心許せる人がいないから孤独なのではないのです
 
安置所の駐車場に着き 車から降りた私の頬に
冷たい風が吹き付けます 
いつものこの時期なら 
冷たい風の中に春のにおいが混じるのに
その風は震災の匂いがする とても冷たいものでした
 
今まで経験したことが無い とても冷たいものでした
 
空は抜けるように青くて 真っ白い雲が流れていきます
遺体安置所に向かう前に マスクを付けながら
 
( あぁ この空の下のずっと遠いところには
  被災していない人が 普通に生活しているんだな )
 
( 私は何でここにいるんだろうか )
 
( 被災するというのはこういう事なんだろうか )
 
抜けるような青空の下で 
一緒にいてくれる夫や実家の家族の傍で
救急車やパトカーや緊急車両が
ひっきりなしに行き来する遺体安置所で
 
私の心は世界の全てから
ぽつんと取り残されていました
 
周りに大勢の人がいるのに
( あぁ ひとりなんだ )と感じたのです
 
感じたというよりは 
ひとりだということを理解したという感じでした
 
友人知人が亡くなっていても
どこの家でも家族や親族に亡くなった人がいて
お別れに行くことも出来ない状態でした
 
被災後に 初めて下着以外の服を買ったのは
母と祖母のために着る 喪服でした
 
周りの人たちが一斉に喪服を求める中
そんなものはもうどうでもよくなっていた私は
また ぽつんと取り残されていました
 
置き去りになった私の心は
それからも何度も顔をのぞかせ
今でも ふとした瞬間に
全ての世界から取り残されている自分がいます
 
この感覚が言葉にすれば孤独なのでしょうか
 
つらさでも 悲しさでも 痛みでもない
とても淡々として静かなもの
 
今までに感じたことが無いものです
 
周りに家族がいてくれても どうにもならない感覚です
 
被災してしまうと 
この様に初めて出会う感情や感覚に戸惑います
誰かに伝えたくても 言葉で表しきれないのです
被災して 初めてそのことが解りました
 
震災で ご家族を亡くされた方とお話しをしたときに
その感覚が自分だけではないのだと知り
始めて私は安堵したのです
同じような感覚を体験されたことを知り 
孤独だけれども 孤独ではないと感じたのです
この様に書いてしまうと 
安心する方がいらっしゃるかもしれませんが
それでも この感覚は絶対に覚えない方が良いのです
 
皆さんに うまく伝えることが出来ませんが
防災減災には 物理的な物だけではなく
心構えがとても重要だと思うのです
 
心構えが無ければ 
いくら物資を備えても 命と心は守れません
被災後に自ら命を絶ってしまう人もいます
その気持ちが 私にはわかる気がします
皆さんの為にも 普段から
大切な人と話し合っておくことが必要なのです
 
非常持ち出し袋は とても大切ですが
命がなければ使えません
災害で起きたことを知り 
命を守るための 心の備えをどうかお願いします
 

語り部をすると決めた時から
私の覚悟はできておりますので 
記事の内容に遠慮はしないでください 
出来るだけ多くの方のお目にとまりますよう
どうか シェアをお願いいたします
 
語り部佐藤麻紀