
劇場公開時に有楽町で観た映画をもう一回観てみた。
学徒出陣で人間魚雷「回天」の搭乗員となった大学生が主人公。
潜水艦に乗り込んで敵艦を探し回り、あるいは敵の駆逐艦に発見されて攻撃を受ける合間に挿入される回想シーンの中に、好きなことや夢を断ち切って戦場に身を投じなければならない運命を受け入れた若者たちの言い表しようのない無念さが滲む。
加えて、登場人物たちの最終的な運命も、特攻で順番に死んでゆくという単純なものではなく。
回天に乗る決心のつかなかった者、自らの搭乗する回天を敵艦の攻撃により破壊された者、いざ発射!という瞬間に回天の故障に見舞われる者・・・それぞれが命を落としたり、生き残ったり。
戦闘シーンの凄惨さで伝えるのではなく、死ぬこと・生きることが自らの意思と関わりなくただ運命のみに翻弄されるさまを描くことで、戦争の悲惨さを伝えようとする映画だと思う。
そのことは、「何のために死ぬのか?」という問いかけに対する、大学野球を諦めて回天の搭乗員となった主人公・並木浩二(市川海老蔵)のセリフに反映されているように感じる。
個人的には、伊勢谷友介演じる北勝也が、皮肉な運命論者を装いながらも、終盤に
「夢を断念せざるを得なかった自分には、軍神になるしか道がない」
と、激しく心情を吐露する場面が良かった。
月並みながら、自分の意思次第で、やりたいことが好きなだけできる現代は、やっぱり恵まれているなと思う。
蛇足ですが、上野樹里が不思議ちゃんじゃない、普通の女性(主人公の恋人)を演じているのは初めて見たような。