毎日寒い寒い、と言っていますが、今が「寒さの底」だそうですのでもうちょっとの辛抱でしょうか。

今日も風の強い前橋です。

私も子供たちも12月の半ば頃から感染症に(風邪ですけど。(^▽^;))悩まされていますが、患者さんにも風邪の方がすごく多いです。

 よく「風邪の薬はない」といいますが、いわゆる風邪薬には風邪の原因となるウイルスを殺す力はありません。市販の風邪薬のコマーシャルを見ても、「風邪だけどこの薬を飲んでがんばって働こう!」というニュアンスがありますよね。 ようするに、熱を下げて鼻水を止めて、なんとか働こう、というためのものです。私の立場からすれば薬はできるだけ飲まずに温かくしてゆっくり寝ましょう、と言いたいところですが、資本主義社会ではそうも言っていられない現実があります。

前橋温泉クリニックでは、いわゆる「風邪」のときには漢方薬をお勧めします。漢方薬の効果は一般薬にある即効性にかなわないこともありますが、何よりも効果を発揮するもののひとつは「風邪」に対して使う薬でしょう。

 例えば、みなさんよくご存知の葛根湯(かっこんとう)は風邪のひき始めに効果がある薬です。漢方は患者さんの体質や状態(証といいます。)を見て使い分けをします。葛根湯は「実証」といわれる、比較的体力がある充実した感じの方(そういう状態の方)に使うとされていますが、私の経験では少し体力が落ちている方にも効きます。ただしちょっと胃が痛くなったりすることがあるので要注意です。

 よく、「葛根湯とロキソニンを飲んだ」という方がいるのですが、この2つは逆の作用を持つので一緒に飲むことはあまりお勧めしません。ロキソニンはよく使われている解熱鎮痛薬です。

 葛根湯は体を温めることで、自分の熱でウイルスをやっつけるという作用を示します。だからあまり熱が高くなったら適応外ということになります。反対にロキソニンのような解熱剤は文字通り熱を下げるので、体調は一時的によくなるかもしれませんが原因となっているウイルスはやっつけられません。結果として、十分休みがとれなかったりすると風邪症状が遷延することにつながります。

 葛根湯の他に知られている漢方薬といえば麻黄湯でしょうか。 子供の発熱などによく使う薬でもあります。インフルエンザの初期に使えるということでも知られています。ただしインフルエンザのときはやはりタミフルにはかなわないと思いますが。

 他にも高齢者の風邪の時に使う麻黄附子細辛湯、咳の風邪のときに使う麦門冬湯、花粉症など鼻水鼻づまりに効果的な小青龍湯、風邪が長引いた時に使う竹じょ温胆湯(ちくじょうんたんとう)などなど、いろいろなものがあります。他にもたくさん使い分けがあります。

 これらを年齢、その人の体質、症状などに応じて使い分けをするので、漢方薬はまさにオーダーメイド医療ということができるでしょう。

 漢方薬局などで作ってくれる煎じ薬の方が効果としては高いものが多いし、よりその人にあわせた薬を作ってもらえると思いますが、保険診療で使えるエキス剤でもかなりの効果を感じます。

 私は年末に髄膜炎になってから柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)を飲んでいます。 風邪が長引いたりして症状がはっきりしないようなときに使う、とありますが、昨年漢方の勉強会に行った時、有名な織部和宏先生が「柴胡桂枝湯を飲んでいると風邪をひきにくくなるように思う。」とおっしゃっていたので、早速毎日飲んでいるわけです。

 結果として、とにかく便秘しません。それに体があたたまってよく眠れます。冷えることでリンパ球の活性が落ちて免疫力が下がりますから、温まることで風邪をひきにくくなるのかもしれません。 寒い間は特に続けて行こうと思っています。

 漢方薬には一般薬にはないよさがありますが、もちろん抗生剤や血圧降下剤など、一般薬の方がはるかに効果が高く即効性がある場合も多いです。 ですから、やみくもに一般薬をいやがるのは正しくないと思います。 薬に対する正しい知識をもち、漢方薬も一般薬も選択肢のひとつなのだと思って下さい。 その人それぞれ何を飲んだらよいのかは変わってきますので、自己判断せず、医師の意見を聞くようにした方がよいでしょう。

 今年いちばんの目標は「風邪をひかないこと」です。 他にも今年の豊富はいろいろありますが、まずは健康いちばんですね!