群馬の牧草から基準を超える放射性物質のニュース。

 新聞などを診るかぎり、原発事故のあと、群馬は比較的数値が少なく推移しているようですが、やはり事故前より多くはなっているようです。

 現在、日本中(日本以外も)が、以前より放射性物質や放射線の量の多い環境になっていると考えられます。しかもこれは今後長期にわたって続くことが予想されます。大手メディアが言っていることが本当なのかどうかわからない今、自分や家族の健康を最大限に守って行くにはどうしたらよいかを考えて行きたいものです。

 放射線による害はどのように起こるのでしょうか?

 最近はメディアでもあまり詳しく紹介していないように感じます。事故当初はよくテレビでも解説していましたが、なんだか難しくてわかりにくいものが多かったと思います。私たちは医学部で放射線医学を学びますが、目に見える人間の体とちがって、目に見えないものを理解するのはとても大変だったことを覚えています。(実際今回のことがあるまで、放射線と健康の関係についてかなり忘れてしまっていたと思います。)

 放射線が体内の水にあたると「フリーラジカル」というものが作られます。このフリーラジカルは体内の分子を酸化し、結果として細胞や遺伝子を傷つけます。傷つけられたらどうなるかというと、ガンになりやすくなったり、機能が低下したりするわけです。これが放射線障害です。もちろん微量の放射線によっても引き起こされます。しかし、私たちの体にはカタラーゼやSOD(スーパ-オキサイドディスムターゼ)といわれる酵素があって、発生したフリーラジカルを消去し、DNAを修復するという働きがあります。ですから自然の放射線など、今までも付き合って来たレベルのものに対してはちゃんと免疫があるわけです。だから、よく「ただちに健康には影響のないレベル」という言葉が使われていたのでしょう。

ちなみにフリーラジカルを発生させるものには他に、タバコや大気汚染物質、大気中の紫外線などがあります。

(ですからタバコを吸う人は放射線の心配をする前にタバコをやめるべきなのです!)

 ということは、もちろんフリーラジカルを発生させる原因をできるだけ遠ざけるのが望ましいわけですが、大気中の放射線量が増えてしまった現在、それを打ち消す力をつけるというのもとても重要になってくるわけです。

それにはどうしたらよいでしょうか。

放射線障害(フリーラジカルによる害)を防ぐ栄養素として最も手っ取り早く摂れるのはビタミンCです。

どんな食材に多いかというと、身近なところですと、

いちご(4個100gでビタミンC62mg)
キウイ(1個80gで55mg)
グレープフルーツ(1個240gで86mg)

赤ピーマン(パプリカ)(40gで68mg)
菜の花(50gで65mg)
ブロッコリー(40gで48mg)

ちょっとなじみが薄いところでグアバ(1個60gで132mg)というのもあります。

 ちなみにビタミンCの摂取の目安は成人100mg、妊婦110mg、授乳中140mgとなっていますが、これはあくまで生きて行くために必要な量ということで、抗酸化力を高め、がんやいろいろな病気を予防するためにはもっとたくさん必要と考えられます。(栄養素の目安の参考:「体に効く栄養成分バイブル/主婦の友社」)

 それに、水溶性ビタミンであるビタミンCは、体内に留まっている時間はせいぜい2、3時間です。1日に何度も摂って、血中濃度を上げておくことが望ましいと考えられます。

 食べ物はもちろんよく洗って、産地をよく見てというのは基本です。放射性物質については危険なものは出回っていないので、以前から問題になっている農薬のことも気にした方がいいですよね。
(もちろん放射性物質もよく洗えば落ちます。私は地元群馬と被災地周辺のものを率先して買ってます。)

 サプリメントも含めて口から入るものの腸管への吸収はだいたい30%といわれます。より効果を望むのであれば、ビタミンCの点滴や、腸管への吸収のよいリポゾーマルビタミンCのサプリメントを摂るのがよいでしょう。

 他にも抗酸化物質として有名なところではαリポ酸、ビタミンA、E、セレン、コエンザイムQ10などがありますが、やたらと摂ってもいいというものでもありません。特にビタミンAとEは体内に蓄積する性質がありますので、過剰に摂るとそれはそれで害を及ぼすこともあります。

いろいろ心配せずにしかもお金をあまりかけずに摂れるのはビタミンCだと思います。
こればら今からでもできる予防法ですね。

上に書いたことは、原発事故がなかったとしても実行して損はないことです。

私にも小さい子供がいます。これからの長い人生で、できるだけ大きな病気の心配がないように、栄養素はしっかりと考えて食べさせたいと思っています。
今までのアンチエイジング医学に、「放射線と共存するアンチエイジング医学」という考え方が必要になったのでないか、と感じる今日この頃です。

(参考)
点滴療法研究会ホームページ

Nair CKK et al:Radioprotectors in radiotherapy. J Radiat. Res2001;42:21-37

からだに効く栄養成分バイブル/監修:中村丁次 主婦の友社