ケアの語源とは、「悲しみをともにする」ということ | リハマガ!【健康とリハビリの専門家】矢口拓宇公式ブログ

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さて、矢口さんは


【ケア】の語源をご存知でしょうか?


先日、ある勉強会で知ったのですが、


Care


ケア

= ギリシャ語で、カーラー。


「悲しみをともにする」


という意味だそうです。


ケアというと、

お世話をする、

とか

介助する、

といった意味を想像しますが、

もともとは、

”一緒に悲しむ”

といった意味なんですね。



先日、まさに一緒に悲しんだなあと
思えたことがりました。


10年前に脳梗塞を発症された
50代の女性を訪問しています。


つい先日、ご主人に先立たれました。


今まで、
なんでもご主人がやってくれていたので、
やらなければならないことが
たくさんになりました。


食事の支度や、ちょっとした家事を
麻痺のある足をひきずりながら、
やっています。


活動量が大幅に増えたことで、
疲労が蓄積し足が硬くなってきました。


よく転ぶようになってしまったのです。


今までは、
簡易型の装具でも大丈夫でしたが、
かなり筋肉の緊張が高くなり、
固定力の高い装具が必要だろうと思いました。



ご本人に提案したところ、


「今のままでいいわ」


と、消極的でした。


そうこうしているうちに、
夜中にまた転んでしまって、


肘に大きなアザを作ってしまいました。


腕全体が真っ黒になるほどです。


ですが、
それほど落ち込んでいる様子でもなく、
転んだ状況をたんたんと教えてくれました。


ただ、


「床からどうやって立ったんですか?」


と質問をしたとき、
彼女の表情が曇りました。



少しの沈黙ののち、


「床から一人で立とうとしたとき、


”ああ、もう、夫はいないんだ”


って、思ったんです。


そしたら急に寂しくなってきて・・・。


体よりも、心が痛かったんです。」




暗闇の中、

一人で困難な状況に立たされたとき、

ご主人を亡くした寂しさを、

際立って感じてしまわれたのです。



あなたなら、
こんなときどう接しますか?



このとき、僕の頭にあったのは


”あなたは大丈夫。”
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と思って話を聴く
^^^^^^^^^^^^^^^^

ということでした。


これは、
第2回例会セミナーの


「あなただから本音が言える
患者さんと信頼関係を築くコミュニケーション」


で橋中先生から教わったことでした。



共感する、というと
同じ気持ちになるというイメージがありますが、
同じ気持ちになってしまうと、
自分自身も悲しくなって、
不安や、どうしたらいいんだろう?
という気持ちになってしまいます。


”あなたは大丈夫”


と思うことで、
自分自身も落ち込んでしまうことが
防げるんだな、
ということに気がづきました。


お話を聴いた後、


再度装具の提案をしました。


すると、

装具の提案を
受け入れてくださいました。


装具や福祉用具を変えることに、
抵抗感がある方がいます。


今までできていたことができなくなった、
ランクが落ちた、
と感じてしまうからだと思います。


ですが、
そういうことじゃないってことを
伝えたい。


今回のケースは、
伝えなくても、
心の中で思ってさえいれば、
伝わったと感じました。


あなたは大丈夫。
ランクが落ちたりなんかしてない。


ちょっとでもよくしよう。


そんなことが
何も言わなくても伝わるなんて


あるんですね。



失意にあるときほど、
悲しみをともにしてくれる
支援者の存在が合ったら
心強いですね。


そんな支援ができるように、
努力していきたいと思います。