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※お待たせいたしました。8月末日に
なってしまいましたが、どうぞ〜
※誰でもない二人です。
夏の終わりは少し寂しい。
なんてのは若い頃の話で、もはや40に
手が届いてしまった俺は、早く涼しく
なってくれと思うばかりだ。
この齢で独身…
振り返れば結婚する機会が3回はあった
ように思うのだけど、3回逃すと、もう
どうでもよくなったような。
出勤途中に見上げれば、木漏れ日が
いい感じ…
ささやかな贅沢として、広い公園の側に
住むことにしたのはよかったと思う。
ここは芝生や花壇に子ども向けの遊具も
あるが、スポーツ施設も複数あるし、
いつも走ってる人や散歩してる人がいる。
休日には俺もここの公営のジムに通って
みたり、公園に面したファミレスで食事
したりで、何かと公園を利用している。
だからだろう。
こっちに越してきてから、やたらと俺は
公園の夢を見るようになった。
それはあまりにもリアルで、でも少し
現実とは異なっていた。
そのことを実感したのは、ファミレスで
コーラを飲んだ夢だった。
あまり酒は得意ではない俺は、コーラが
気晴らしみたいなところがあったが…
そのときは健康を考えて、コーラを止め
無糖の炭酸水を飲むようにしていた時期
だった。
「あれ、コーラ…あ、もしかしてこれは
夢?」
ファミレスの窓から外を見れば、夕日を
浴びて走る人がいて、まあそれは普段と
変わらなかったけれど。
夢の中で夢と自覚できる…
そういうのを明晰夢というらしい。
コーラの気付きをきっかけに、なぜか
俺は頻繁に公園にいる明晰夢を見る
ようになった。
夢の中では遠慮せずにコーラを飲み…
公園の中でも、日頃はあまり行かない
エリアに行ってみたりもした。
ぶらぶらと夢の中で散歩してると、
向こうからまたランナーが来て、
すれ違ったり。
うん?
何となく引っ掛かるものがあったが、
別に知り合いでも何でもなく。
もしかしたら、現実でもこんなふうに
すれ違っているのかもしれないと少し
考えたが、よく走っているその人は
背が高く俺より少し若そうな男で、
いつも顔がはっきりしない。
大きなサングラスをしているか、
キャップを目深に被っているかで…
イケメン風には感じるけど、まあ
それもそんな感じがするだけ。
でもまあ、この人よくいるよね?
背格好から、同一人物が俺の夢の中で
走っているような気がする。
とはいえ、ほんとその人は走っている
だけで、それもどうかすると視界の隅で
遠くを走っているだけだったりして…
あれだよね、俺の夢の世界ではただの
モブに過ぎない。
特に意味などないのかもしれない。
公園の明晰夢で俺が行くようになった
場所、それは小さな舞台だった。
実際に公園の隅に、コンクリートで
出来ている屋外舞台があるのだが、
たまたま平日に見かけたときには…
小学生が階段状の席に座っていて、
社会科見学か何かの説明を先生が前で
していた。
そんなことに使うくらいしかなく、
わずかな塗装もだいぶ剥げている。
それでも、舞台には違いない。
「よーし、ここなら…」
なぜか見るようになった明晰夢…
意味があるとすれば、ここでなら
踊ってもよさそうなことでは?
ここならほぼ人目もない。
おしさんが、若い頃を思い出して
一人で踊っても…誰も見てないはず。
幸い、夢の中でもスマホは操作できて
ダンス動画も確認できる。
夢の始まりは大抵、その舞台と離れた
ところなのだが、舞台まで歩いて行って
気が済むまで踊るようになった。
俺は元々、中高生の頃にはダンスに
のめり込んでいた。
その頃は人からも、アイドルを目指すか
プロのダンサーになれば?と言われたり
していた。
当時はちょっと目立つ存在だったと思う。
校内に俺のファンクラブみたいなのが
出来たりもして。
でも、本気で芸能界を目指すかというと
そこまで思い切れなかった。
大学は理系に行きたいなとか、別の夢も
あったし。格好いいと騒がれるのが少し
負担にもなってきていた。
当時、進路を決めるきっかけになったの
は妹の一言だったかもしれない。
「お兄ちゃんて、派手に生きたいの?
地味に生きたいの?」
「うーん…難問だなあ」
「芸能人にでもなりたいならそのままで
いいと思うけど、そうじゃないなら…
メガネ掛ければ?」
「え、そういう問題?」
「意外とそういう問題、と思う〜」
妹に別に深い考えはなかったと思うが、
それから俺はメガネが欠かせない。
大学進学も、その後の仕事でも…
俺は真面目に地道に生きてきた。
意外と独身のままなのは想定外だが、
現在の生活にはほぼ満足している。
ああでも、夢の中なら…
この小さな舞台の上では、メガネも
外してかまわないよね?
明晰夢にも慣れてくると、俺は少しだけ
大胆になった。
あ、今ならどうせおじさんなんで、
現実でもメガネを外したって別に普通で
しかないのかも?
ともかく、夢の中ではメガネを外して
俺は踊るようになった。
若い頃あこがれたマイケル・ジャクソン
を復習してみたり、逆に最近流行りの曲
を練習してみたりした。
そうそう、これは夢なんだから…
実年齢は忘れて、うんと上手くなっても
おかしくはない!
俺の想像力…または思い込む力の発達に
よって、夢の舞台で俺は華麗に踊ること
が出来るようになってきた。
毎度、離れたところをまたあの誰かが
走ってるような気はするが、いちいち
こちらを見てないだろう。
と思っていたけど…
あるとき、踊りながらふと見ると、
あの男が足を止めていた。
向こうはサングラスだけど、へぇ?と
俺を見ているような気がした。
一瞬、目が合ったかな〜と思ったけど、
慌てたようにまた走り出してしまった。
そんなこんなで、最近は現実でも
家の中でなら少し踊っている。
夢の中とは勝手が違って、とにかく
ケガはしないようにと踊っている。
やっぱり現実と夢とは違うよね!
でもまあ、気分がよければ何でもいい。
現実での休日…
俺はあの舞台に来てみた。
夢の中ではお世話になっているが、
実際にはめったに来たことがない。
(この広い公園でも奥の方で、遠い)
あ、こうして見ると夢の中より薄汚い。
おまけに、子どもたちが鬼ごっこをして
遊んでいて、踊れる感じでもない。
あらら〜と舞台を降りて小道に出ると、
あの男が…あの夢で走ってる男が走って
きた!
少し茶色っぽい髪、大きなサングラス、
白っぽいTシャツに、短パンとソックス
や靴は黒かな。
おおお?
お、こっち気付いたよね?
足を止めたのはそういうことだよね?
いやいや、俺の夢に出てきたといっても
向こうが俺を認識してるとは限らない。
というか、そんなはずはない。
「あ…」
そいつはサングラスを上にずらした。
へぇ〜、大きな目に驚いた表情を
浮かべている。
そういえば俺の方はメガネ無しだ。
ほんとは大して目は悪くないし、
この頃は面倒で。
これからどうしよう…挨拶してみる?
と思ったのに、そいつはまたサングラス
を下ろし、くるっと背を向けて反対側に
走り出した!
「あの、待って…そこのお兄さん、
待って待って!」
俺の声は聞こえたと思うのに、さらに
スピード上げて走りやがった!
「こら待てっ!待て待て待って〜」
俺まで全力で走る羽目になったぞ。
しかし、最近は夢でも現実でも少々
鍛えていたせいか、そうきつくなかった。
「そこのお兄さん!」
「……………はい?」
観念したようにそいつは足を止めて…
はあはあと荒い息をつきながら、
首を傾げ…少しだけ俺に向いた。
「あの、すみません…変なことを
言いますが…」
「はい」
「あなたは俺の夢の中で、走ってらした
方ですよね?」
「そっちこそ…」
サングラスを外して、額の汗を拭うよう
にしながらその人は、まぶしいみたいに
目を細めて少しだけ笑った。
「僕の夢の中で、踊っていた人ですね?」
「あ…」
そういうことになるの?
え、これってどういうこと?
そのときはわからなかった。
いろいろなことがわからなかった。
でも結局、一緒に公園に面した例の
ファミレスに行き…お昼を食べた。
そして、それきりでもなかった。
今日はこれから、初めてうちに来る。
もちろん、そうと決まったときから
大掃除はしっかりしてある。
二人とも公園の近所に住んでいるので、
ご近所友達というところかな?
夢ではイケメン風とぼんやり思ってた
けど、現実でよく見たら、間違いなく
イケメンさんだった。
ランニングが趣味らしい。
大人になって、新しい友達を作るのは
難しい。
だから、俺はすごく嬉しい。
夢の中ではうんと離れてたのに、今では
こんなふうに会えるなんて夢みたい。
そんな取りとめもないことを考えて、
せっかくだからコーラと…
相手用にビールと…
買ってきたチキンなんかもOK…
ふむ。
満足して、俺は冷蔵庫を閉めた。
※いずれアメ限にするかもですが、
まずは公開してみますね〜
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※写真は某公園で春に撮りました🌲
