山の入口で、水と磐座を考える。
動物や自然を通して命のつながりを描く絵本作家・アーティスト、岸田茉樹です。
(私はこんな人=プロフィール )
青葉の滝を訪れたあと、次に向かったのが都祁(つげ)山口神社です。
ここを選んだきっかけは、地層や伝承を調べていて気になったこと。
神社の名前に「山口」と付く場所が少し気になっていました。
もしかすると、こういう場所には水や龍にまつわる伝承が残っているんじゃないか?
そんな仮説を立てて、調べてみることにしました。
「山口」って、何だろう?
「山口」と聞くと、単純に「山の入口」という意味に思えます。
でも、古代の人々にとって山は、ただの地形ではありません。
雨が山に降り、そこから水が流れ出す。
山から生まれた水が、やがて里の田畑を潤していく。
つまり山は、命を支える水の源でもありました。
そう考えると、「山口」という場所は、
山から水や恵みが里へ出てくる場所
としても重要だったのではないか。
山の神を祀り、水の恵みを祈る。
そこから水神や龍神への信仰につながっていく場所もある。
私はそんなところに、龍の痕跡が残っていないかを探しています。
とても大切にされている神社だった
実際に訪れてみると、境内はとても綺麗に清掃されていました。
地域の方々、氏子さんたちに大切にされている神社なんだろうな、ということが伝わってきます。
そして、この神社には本殿の奥に磐座があります。
そこまで歩いてみることにしました。
距離としては、5分ほど。
ところが。
青葉の滝を歩いたときとは、身体の感覚が明らかに違いました。
重い。
同じように山の中を歩いているのに、全然違う。
「何だ、この違いは?」
思わず主人とも話しました。
そして、歩きながらもう一つ気づいたことがあります。
虫が多い。
いろんな虫に遭遇しました。
そういえば、さっきの青葉の滝では、枝に巣を張っていた蜘蛛くらいしか、あまり虫を見なかった。
こちらでは、歩いていると次々に虫が現れる。
もちろん、季節や環境の違いもあるでしょう。
でも、体感としてはまるで、
「下界」と「神域」
くらい違う。
同じ山の中なのに、こんなにも感覚が違うのか。
それが今回かなり印象に残りました。
磐座に行ってみる
都祁山口神社の奥にある磐座は、社殿が建てられる以前から信仰の対象だったとされています。
古代の人々は、こうした巨石に神が降りてくると考えていた。
つまり、神社という建物ができるより前から、ここには祈りの場所があったということです。
実際に磐座まで行ってみました。
……が。
私は、ここでは特に何も感じませんでした。
これも、面白いところです。
「磐座だから何か感じるはず」
とは限らない。
むしろ、私が気になったのは、そのさらに奥でした。
磐座の奥にあったもの
少し先まで進んでみると、そこに池がありました。
水場です。
ため池のような場所でした。
そこで、ちょっと納得しました。
やっぱり水がある。
都祁山口神社は、山そのものを信仰する場所であると同時に、水とも深く関係している。
大和高原にある都祁地区では、水はとても貴重なものだったといわれています。
山に降った雨や、山からの水を蓄え、田畑へと届ける。
ため池は、昔の人々の生活を支える重要な場所でした。
だからこそ、そこには祈りもあったのでしょう。
「水がなくならないように」
「雨が降りますように」
「今年も作物が育ちますように」
そういう願いが積み重なっていく。
ここには、龍はいない
そして、ここまで見てきて思ったこと。
「ここには龍はいないなぁ」
でした。
水がある。
山がある。
磐座がある。
古代からの自然信仰がある。
龍がいても不思議ではない条件は揃っている。
でも、私が感じたのは龍ではなく、
山そのものの神様。
そんな感じでした。
都祁山口神社の主祭神は大山祇神(おおやまつみのかみ)。
山の神として知られ、山林の恵みなどとも関わる神様です。
ほかにも木の神である久々能智神、土の神である波邇夜須毘売神などが祀られています。
山、木、土。
そして、そこから生まれる水。
この場所は「龍」という一つの存在に集約するというより、
山そのものが持つ力と恵みを祀っている場所
なのかもしれません。
そして、別の霊獣ならいるかもしれない。
そんな感じもしました。
「龍がいる場所」を探しているわけじゃない
今回の都祁山口神社で、改めて思ったことがあります。
私は龍がいる場所を探して、
「いた!」
「いなかった!」
と答え合わせをしたいわけではないんだと思う。
むしろ、
なぜ、この場所で人は祈ったんだろう?
という龍の起源が知りたい。
山がある。
岩がある。
水がある。
木がある。
そこに人が暮らし、農作物を育て、雨を願い、自然の恵みに感謝する。
その積み重ねの中から、神様や龍や、さまざまな霊獣の物語が生まれていったのかもしれない。
だから私は、龍を探しながら、
龍だけを見ているわけではない。
土地そのものを見ている。
今回の都祁山口神社は、そんなことを改めて感じさせてくれる場所でした。
そして何より面白かったのが、
青葉の滝と、こんなに近い場所なのに、
身体の感じ方がまったく違ったこと。
同じ「山と水」でも、土地によってこんなに違う。
これは、もっといろんな場所を歩いてみないと分からない。
龍探し、ますます面白くなってきました。
【基本情報・ご祭神】
所在地:奈良市都祁小山町(旧山辺郡都祁村)
主祭神:大山祇神(おおやまつみのかみ) 山の神・水の神であり、山林の恵みや造営用の木材を司る神様です。
配祀:久々能智神(くくぬちのかみ・木の神)、波邇夜須毘売神(はにやすひめのかみ・土の神)など
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