22年7月26日 ジョングク

 

こっそりと病院の花壇の花を摘んだ。

勝手に頬をゆるんで我慢できない。

病室のドアをノックしても返事がなかった。

もう一度叩こうとしたそのとき

ドアが少し開いた。

 中を覗いてみると、誰も居なかった。

もやもやと複雑な感情に苛まれながら

車椅子で移動していたときに

彼女に出会った。

髪の毛をひとつに結んだ女の子だった。病院のベンチに一緒に座って

あの子と一緒に音楽を聴いたり

絵を描いたり、屋上でいちご牛乳を二人で分けて飲んだ記憶がよみがえる。

手にはまだ摘んだ花があるけれど、渡すべき相手はもう居ない。