金融の本質とは何か?リスクテイクとリスクマネジメントである。
銀行は上記の役割を担わずに一体何をやっているのか?その疑問を解決するのに本書が役に立つ。
私が銀行員として6年間勤務して感じたことは「銀行は金融庁の子会社である」ということだ。本書の主人公である森金融庁長官は金融機関をあるべき姿に戻すため、金融検査マニュアルを廃止することが必要と考えたと述べている。金融検査マニュアルは1999年に公表され、銀行の健全性を高めることを目的とする。格付けの低い企業への融資を控えることを求める制度設計になっている。これに加えて信用保証制度が拡充された。(98年特別保証・99年緊急保証)こうして金融機関は制度の意に添い保証付融資を伸ばし、プロパー融資は敬遠された。
このような事態は金融庁の意図したものではなくリレーションシップ・バンキング(地域密着型金融)の実施を合わせて伸ばそうとしていた。しかし、少し考えてみればおかしな話だ。営業マンに対して「顧客の立場に立って行動しましょう。でも売上目標次第でボーナスも出世も決まります。債権の焦付きはキャリアに傷がつきます」と言えばとにかく優良顧客に対する売上を伸ばそうとするのは当然だ。それは銀行マンも同じだ。
ただし、本書には限界がある。解決策は金融検査マニュアル廃止による旧態復帰でしかない。特に「短コロ」と言われる短期折り返し融資の復活にこだわってはいるが企業の過小資本をごまかしたものでしかない。企業の過小資本を解決するため、事業再生を実行するためには金融機関による直接金融の実施が本来欠かせない。銀行法16条の議決権保有制限の非上場会社への不適用やBIS規制に耐えうる資本強化が必要である。そこまでの言及はなかった。