ドーニャ・ヴェイソヴィチ

dunja vejzović


1943~。クロアチアのザグレブに生まれる。ザグレブ音楽アカデミーで学び、ザグレブのクロアチア国立劇場でメゾソプラノとしてキャリアを開始。1971年から1978年まで、ニュルンベルクオペラのメンバーとなり、カルメン、『タンホイザー』のヴーナスなどを歌った。国際的なキャリアは1978年にバイロイト音楽祭で始まり、そこで『パルシファル』のクンドリーを歌った。 同年、メトロポリタン歌劇場に『タンホイザー』のヴーナスでデビュー。1980年、カラヤンの働きかけでザルツブルク音楽祭に『パルジファル』のクンドリーで出演。1982年、ミラノ・スカラ座に『トロイア人』のディードーでデビュー。

 

カラヤンに認められ、カラヤンの重要なワーグナーの録音に何度か出演しているにもかかわらず、知名度は極めて低い。声の質は暗く地味だが、高音から低音までムラなく安定しており、パワーもある。そしてなにより演技力が素晴らしい。クリスタ・ルートヴィッヒに似たタイプだと思う。出演しているCD録音は少なく、いずれもカラヤン指揮である。

 

 

(1)ワーグナー『ローエングリン』 カラヤン指揮 ベルリン・フィル EMI1975
ドウニャ・ヴェイソヴィチ(オルトルート)、アンナ・トモワ・シントウ(エルザ)、ルネ・コロ(ローエングリン)、ジークムント・ニムスゲルン(フリードリヒ)、カール・リッダーブッシュ(ハインリヒ)
このときまだ無名であったヴェイソヴィチがオルトルートに起用されていることに注目したい。ここでヴェイソヴィッチはカラヤンの期待に応え、第二幕のニムスゲルンとのやり取りは緊張感にあふれたものでじつに素晴らしい。この録音の最大の見どころはここである。


(2)ワーグナー『パルジファル』 カラヤン指揮 ベルリンフィル グラモフォン1980
ドゥニャ・ヴェイソヴィチ(クンドリー)、ペーター・ホフマン(パルジファル)、クルト・モル(グルネマンツ)、ジョセ・ファン・ダム(アンフォルタス)、ジークムント・ニムスゲルン(クリングゾール)
『ローエングリン』のときの見事な演技と歌唱が評価され、このオペラの録音でクンドリーに抜擢されたものと思われる。『ローエングリン』のときと同じくニムスゲルンとの競演である。

 

(3)ワーグナー『さまよえるオランダ人』 カラヤン指揮 ベルリン・フィル EMI1983

ドゥニャ・ヴェイソヴィチ(ゼンタ)、ヨセ・ファン・ダム(オランダ人)、クルト・モル (ダーラント)、ペーター・ホフマン(エリック)

クンドリーに続いてゼンタを歌っているが、よほどカラヤンに気に入られたのだろう。ヴェイソヴィッチはドラマチックに歌っているが、ゼンタを歌う場合は高音域にもう少し鋭さが欲しいと思う。

 

 

 

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