アンナ・トモワ=シントウ

Anna Tomowa-Sintow

1944~。ブルガリアのスタラ=ザゴラに生まれる。ソフィアのブルガリア国立音楽学校に入り、1960年から65年まで声楽とピアノを学んだ。1965年、スタラ=ザゴラ劇場『エフゲニー・オネーギン』にタチアーナ役でデビュー。1967年、ライプツィヒ歌劇場と契約、1972年にはベルリン国立歌劇場、ソフィア国立歌劇場とも契約を結んだ。1973年、ザルツブルク音楽祭に出演して広くその存在を認められる。カラヤンから高く評価されたせいで一気に一流歌手の仲間入りをした。

 

ややスピントの効いた気品のある美声で伯爵夫人のような役はぴったりである。しかし、基本的にモーツァルト歌いであり、ワーグナーやリヒャルト・シュトラウスは合わないと思う。声の質は地味な方で、ワーグナーのヒロインをやる器ではないと思う。カラヤンに気に入られたのはその容姿のおかげもあるのではないかと。

 

以下、必ずしもオススメの順ではない。

 

 

(1)モーツァルト『フィガロの結婚』 カラヤン指揮 ウィーンフィル デッカ 1978
ジョセ・ヴァン・ダム(フィガロ)、コトルバス(スザンナ)、トム・クラウセ(伯爵)、アンナ・トモワ=シントウ(伯爵夫人)、フレデリカ・フォン・シュターデ(ケルビーノ)
フィガロの伯爵夫人はまさにアンナ・トモワ=シントウにぴったりの役ではないだろうか。『フィガロ』は個人的にはベーム盤を愛聴しているが、どちらかと言えばこれは特殊な『フィガロ』であって、スタンダードとするべきはこのカラヤン盤の方だろう。

 

(2)R.シュトラウス『ばらの騎士』 カラヤン指揮 ウィーンフィル グラモフォン 1982

アンナ・トモワ・シントウ(マルシャリン)、アグネス・バルツァ(オクタヴィアン)、クルト・モル(オックス)

なんだか微妙だ。リヒャルト・シュトラウスの音楽はアンナ・トモワ=シントウに合ってないと思うが、マルシャリン(元帥夫人)の役はアンナ・トモワ=シントウにぴったりなのである。

 

(3)モーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』 カラヤン指揮 ベルリンフィル グラモフォン 1985
アンナ・トモワ・シントウ(ドンナ・アンナ)、サミュエル・レイミー(ドン・ジョヴァンニ)、キャスリーン・バトル(ツェルリーナ)、フェルッチオ・フルラネット(レポレロ)、アグネス・バルツァ(ドンナ・エルヴィーラ)
アンナ・トモワ=シントウにドンナ・アンナのような役はどうかと思ったが、頑張って歌っている印象。しかし、どっちかといえばエルヴィーラではないかと思う。

 

(4)R.シュトラウス『ナクソス島のアリアドネ』 レヴァイン指揮 ウィーンフィル グラモフォン 1986
アンナ・トモワ・シントウ(アリアドネ)、キャスリーン・バトル(ツェルビネッタ)、アグネス・バルツァ(作曲家)、ヘルマン・プライ(音楽教師)
アンナ・トモワ・シントウはリリックとドラマチックを兼ね備えているとも言えるし、そのどちらでもないと言える。その微妙なキャラを感じさせるのがこれではないだろうか。


(5)ワーグナー『ローエングリン』 カラヤン指揮 ベルリン・フィル EMI 1975
アンナ・トモワ・シントウ(エルザ)、ルネ・コロ(ローエングリン)、ドウニャ・ヴェイソヴィチ(オルトルート)、ジークムント・ニムスゲルン(フリードリヒ)、カール・リッダーブッシュ(ハインリヒ)
これはカラヤンが使い方を間違えているのではないか。アンナ・トモワ=シントウは声の質が「伯爵夫人」であって「乙女」ではない。エルザ役は合ってないと思う。ルネ・コロとの共演は伯爵夫人が若い色男と浮気しているような感じ。

 

 

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