カルロ・ベルゴンツィ
Carlo Bergonzi

1924~2014。イタリア、パルマ近郊のヴィダレンツォに生まれる。パルマ音楽院で声楽を学ぶ。24歳のとき、バリトンとして『セビリアの理髪師』のフィガロでデビュー。しかし、その後テノールとしての可能性を自覚するに至り、いったん舞台を退いて勉強し直した。27歳のときバリの劇場で『アンドレア・シェニエ』のタイトルロールで再デビュー。それがイタリア国営放送のプロデューサーの目にとまり、ラジオ番組『ヴェルディ没後50周年記念』に出演して一躍有名になった。29歳でスカラ座デビュー、32歳でメトロポリタン歌劇場に『アイーダ』のラダメスでデビュー。スターとしての地位を不動のものにした。

デル・モナコ、ディ・ステファノ、コレッリに並ぶ1950~60年代のイタリア4大テノールのひとりと言われている。デル・モナコやコレッリのような張りのある輝かしさはないが、気品のある柔らかな美声と抑制された表現力を持つ優れたテノール。マンリーコやドン・カルロなど、役によってはこれ以上ないと思われるものがある。

ベルゴンツィが出ているというだけなら録音は非常に多いが、個人的に注目したのは次の五つ。


(1)ヴェルディ『トロヴァトーレ』 セラフィン指揮 ミラノ・スカラ座管弦楽団 グラモフォン 1962
ベルゴンツィ(マンリーコ)、コッソット(アズチェーナ)、ステッラ(レオノーラ)、バスティアニーニ(ルーナ伯爵)、ヴィンコ(フェルランド)
このCDはコッソットのところで紹介したが、ベルゴンツィとコッソットの組み合わせはじつに素晴らしい。歌唱として素晴らしいのは言うまでもないが、ドラマとしても素晴らしい。マンリーコはベルゴンツィにぴったりである。

(2)プッチーニ『蝶々夫人』 エレーデ指揮 聖チェチーリア音楽院管弦楽団 デッカ 1958
ベルゴンツィ(ピンカートン)、テバルディ(蝶々夫人)、フィオレンツァ・コッソット(スズキ)
配役は申し分ない。テバルディとベルゴンツィの組み合わせはこのオペラのベストの一つである。強烈な迫力のあるドラマ性ではカラヤン盤の方がはるかに勝るが、どっちを選ぶかは好みの範囲内だろう。

(3)ヴェルディ『ドン・カルロ』 ショルティ指揮 コヴェントガーデン王立歌劇場 デッカ 1965
ベルゴンツィ(ドン・カルロ)、テバルディ(エリザベッタ)、ニコライ・ギャウロフ(フィリッポ2世)、フィッシャー=ディースカウ(ロドリーゴ)、グレース・バンブリー(エボリ公女)
これはショルティの指揮にもう少し深みが欲しいと思うものの、歌手陣は素晴らしい。それぞれが役にはまっている。とくにベルゴンツィのドン・カルロはぴったりだと思う。

(4)ヴェルディ『リゴレット』 クーベリック指揮 ミラノ・スカラ座管弦楽団 グラモフォン 1964
ベルゴンツィ(マントヴァ侯爵)、フィッシャー=ディースカウ(リゴレット)、レナータ・スコット(ジルダ)、イヴォ・ヴィンコ(スパラフチーレ)、フィオレンツァ・コッソット(マッダレーナ)
レナータ・スコットがジルダを演じている『リゴレット』は2組あって、ひとつはガヴァッツエーニ指揮で、マントヴァ侯爵がアルフレード・クラウス。そして、もうひとつがベルゴンツィがマントヴァ侯爵を歌ったこのCDである。どっちも豪華メンバーであることに変わりわないが、ただの豪華メンバーで終っている点でも同じである。ベルゴンツィはマントヴァ侯爵にぴったりこない。また、スコットはスコットが歌っているようにしかみえないし、ディースカウはディースカウが歌っているようにしかみえない。各歌手のキャラが強すぎて、役のキャラを演じている感じが全然しないのだ。たんなる名歌手の競演として聴くのなら反対しないが、ドラマとしては楽しめない。

(5)ヴェルディ『アイーダ』 カラヤン指揮 ウィーンフィル デッカ 1959
ベルゴンツィ(ラダメス)、シミオナート(アムネリス)、テバルディ(アイーダ)、フェルナンド・コレナ(エジプト王)、コーネル・マックニール(アモナスロ)
ベルゴンツィはラダメスのような役は物足りないと思うがこれは好みの範囲内でしょう。現在このオペラには他に優れたものが多いので、あえてこれを選ぶ理由は見当たらない。

 

 

 

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