ジュリエッタ・シミオナート
Giulietta Simionato

1910~2010。イタリアのフォルリに生まれる。若い頃から歌手としての才能を認められ、18歳のときにフィレンツェのコンクールで優勝している。25歳の時にスカラ座にデビューしたが、端役ばかりの時期が十年以上も続いた。37歳の時、『ミニヨン』のタイトルロールを歌ってようやく脚光を浴びた。翌年(1948年)、トスカニーニに認められてグライドボーン音楽祭で『シンデレラ』のタイトルロールを歌い、名声を確立した。1954年、サンスランシスコ・オペラでアメリカデビュー。1959年、メトロポリタン歌劇場にデビュー。

イタリア歴代最高のメゾ・ソプラノとして誉れ高い。デッカで膨大なオペラの録音を残したらしいが、現在聴けるものは限られている。しかも、なんせ古い人なので、多くの場合、録音がよくない。その名声のわりには、その実力を知るための優れた音源に不足している。スカラ座ではマリア・カラスの相棒として頻繁に共演したらしいが、所属するレコード会社が異なるので、CDで二人の共演が聴けるものはほとんどない。

コッソットはシミオナートの後継者と言われたが、歌手としてのタイプはまるで正反対である。コッソットがパワーと美声を兼ね備えたプリマのような華やかさを有するのに対し、シミオナートはあくまで脇役の性格描写に徹していて、真に迫った表現力でオペラ全体をドラマチックに盛り上げる。声量も十分である。


(1)ヴェルディ『イル・トロヴァトーレ』 シッパース指揮 ローマ歌劇場管弦楽団 EMI 1965
シミオナート(アズチェーナ)、コレッリ(マンリーコ)、トゥッチ(レオノーラ)、メリル(ルーナ伯爵)
コッソットの派手なアズチェーナには圧倒されてしまうが、あれがアズチェーナのベストかといえば、そういうわけではないからオペラは難しい。アズチェーナをアズチェーナらしく歌っているのは、やはりシミオナートの方だろう。

(2)マスカーニ 『カヴァレリア・ルスティカーナ』 セラフィン指揮 聖チェチーリア音楽院 デッカ 1960  
シミオナート(サントゥッツァ)、デル・モナコ(トゥリッドゥ)、アンナ・ディ・スタシオ(ルチア)、コーネル・マックニール(アルフィオ)、アナ・ラケル・サトレ(ローラ)
サントゥッツァはアズチェーナと並んでシミオナートの十八番であった。こういう性格的な役柄になると、シミオナートの演技の上手さが際立つ。デル・モナコとの共演だし、このオペラの定盤としておさえておくべき。

(3)ヴェルディ 『運命の力』 プラデッリ指揮 聖チェチーリア音楽院管弦楽団 デッカ 1955
シミオナート(プレチオシルラ)、デル・モナコ(アルヴァーロ)、テバルディ(レオノーラ)、バスティアニーニ(ドン・カルロ)、シエピ(グアルディアーノ)
これはシミオナートだけでなく、当時のデッカのスター歌手が勢揃いという記念碑的名盤。とりあえず、おさえてきたい。

(4)ヴェルディ『アイーダ』 カラヤン指揮 ウィーンフィル デッカ 1959
シミオナート(アムネリス)、テバルディ(アイーダ)、ベルゴンツィ(ラダメス)、フェルナンド・コレナ(エジプト王)、コーネル・マックニール(アモナスロ)
アムネリスもまたシミオナートの十八番となっており、テバルティとの組み合わせは当時としては最強かもしれないが、現在このオペラにはスター勢揃いの超豪華盤が他に複数存在する。録音が古いこともあって、あえてこれを選ぶ理由は見当たらない。



・・・声量は十分だが、声そのもののパワーとか美しさとか超絶技巧とかで勝負するタイプではなく、あくまで表現力で勝負するタイプ。おそらくステージでの人気は凄かったと思うが、CDで人気の出るタイプではないと思う。

 

 

 

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