ルッジェーロ・ライモンディ
Ruggero Raimondi

1941~。イタリアのボローニャに生まれる。ローマの聖チェチーリア音楽院に入学。22歳のとき、スポレート歌劇場のコンクールで優勝。翌年、『ラ・ボエーム』のコッリーネ役で同歌劇場にデビュー。さらに、『シチリアの晩鐘』のプロチダでローマ歌劇場にデビュー、大成功をおさめた。イタリア系のバス歌手はそれほど人材がいないため、ひっぱりだことなる。27歳のとき『トゥーランドット』のティムール役でミラノ・スカラ座にデビュー。28歳のときグラインドボーン音楽祭で初めてドン・ジョヴァンニを演じる。29歳のとき、『エルナーニ』のシルヴァ役でメトロポリタン歌劇場にデビュー。同年、ミラノ・スカラ座のシーズン・オープニングに『シチリアの晩鐘』のプロチダ役でデビュー。その地位を不動のものにした。

気品のある美声である。演技は上手いが、何でもそつなくこなし、役づくりに凝ってのめり込むタイプではない。そのため、性格的にやや冷たい感じがする。


(1)『トスカ』 カラヤン指揮 ベルリン・フィル グラモフォン 1979
ルッジェーロ・ライモンディ(スカルピア)、カーティア・リッチャレッリ(トスカ)、ホセ・カレーラス(カヴァラドッシ)
ライモンディのやや冷たさのある美声はスカルピアのような冷酷卑劣な悪役がぴたりとくる。リッチャレッリもリリックかつ鋭さと力のある声がトスカに合っている。カラヤンの指揮するベルリンフィルの重厚かつ華やかな響きが素晴らしい。録音も非常にいい。総合的にみて、このオペラの決定盤か。

(2)ヴェルディ『アッティラ』 ガルデッリ指揮 ロイヤルフィル フィリップス 1972
ルッジェーロ・ライモンディ(アッティラ)、クリスティーナ・ドイテコム(オダベッラ)、カルロ・ベルゴンツィ(フォレスト)、シェリル・ミルンズ(エツィオ)
これはすでに何度も触れました。主にドイテコムの美声とパワーとテクニックを聴くためのものなのだが、それにライモンディ、ベルゴンツィらの美声がミックスされて、なかなか聴きごたえのある楽しいCDになっている。軽快なヴェルディ節もいい。録音もいい。ベルディのオペラCDの中でもかなり優れたものに属するのではないか。

(3)ヴェルディ『シチリアの晩鐘』 レヴァイン指揮 ニューフィルハーモニア管弦楽団 RCA 1974
ルッジェーロ・ライモンディ(プロチダ)、マーティナ・アーロヨ(エレナオ)、プラシド・ドミンゴ(アッリーゴ)、シェリル・ミルンズ(モンフォルテ)
ライモンディの成功のきっかけとなったオペラである。個々のアリアに聴かせどころはあるが、『アッティラ』に比べるとオペラそのものの魅力に乏しいように思える。男性歌手陣はほぼ完璧な布陣である。アーロヨは決して悪くはないが、ドイテコムには負けると思う。

(4)ロッシーニ『アルジェリアのイタリア女』 アバド指揮 ウィーンフィル グラモフォン 1987
ルッジェーロ・ライモンディ(ムスタファ)、アグネス・バルツァ(イザベッラ)、エンツォ・ダーラ(タッデーオ)、フランク・ロバード(リンドーロ)
楽しくて仕方ないロッシーニのオペラブッファ。ロッシーニはやっぱりアバドに限る。キャストも申し分ない。ロッシーニは早口やアジリタが多くてロッシーニ専門の歌い手でないと結構難しいと思うのだが、ライモンディはロッシーニもなんなくこなすのだなあ。

(5)モーツァルト『フィガロの結婚』 マリナー指揮 アカデミー管弦楽団 フィリップス 1985
ルッジェーロ・ライモンディ(伯爵)、ジョセ・ヴァン・ダム(フィガロ)、バーバラ・ヘンドリックス(スザンナ)、ルチア・ポップ(伯爵夫人)、アグネス・バルツァ(ケルビーノ)
あま
りにも有名なオペラで星の数ほどCDがあるにもかかわらず、積極的に聴きたいと思うほどのものは少ないが、これは聴いてもいいかもしれない。マリナーらしく、そつなくスマートにまとめている。ライモンディとジョセ・ヴァン・ダムがマリナーの意図によく応えていると思う。ふたりともうまい。

(6)モーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』 マゼール指揮 パリ・オペラ座 ソニー 1978 
ルッジェーロ・ライモンディ(ドン・ジョヴァンニ)、ジョセ・ヴァン・ダム(レポレロ)、エッダ・モーザー(ドンナ・アンナ)、キリ・テ・カナワ(ドンナ・エルヴィーラ)、テレサ・ベルガンサ(ツェルリーナ)
ライモンディのドン・ジョヴァンニとジョセ・ヴァン・ダムのレポレロはなかなかうまい。とは言っても、この二人の組合わせでまずいものができるわけないけども。ライモンディは他のドン・ジョヴァンニにはない気品がある。もう少し迫力が欲しいが、ここは贅沢いってはきりがない。他の配役にはやや不満がある。録音もあまりよくない。

(7)プッチーニ『トゥーランドット』 カラヤン指揮 ウィーンフィル グラモフォン 1981
ルッジェーロ・ライモンディ(ティムール)、カーティア・リッチャレッリ(トゥーランドット)、プラシド・ドミンゴ(カラフ)、バーバラ・ヘンドリックス(リュー)、ピエロ・デ・パルマ(皇帝アルトゥム)
ドミンゴのカラフ、ヘンドリックスのリュー、ライモンディのティムール、それぞれ申し分ない。リッチャレッリのトゥーランドットというのは期待させるが、やはりトゥーランドットはニルソンのイメージが強すぎて、それに比べるとかなり物足りない。

 

 

 

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