ニコライ・ギャウロフ
Nicolai Ghiaurov

1929~2004。ブルガリア、ヴェリングラードの貧しい家庭に生まれる。5歳のころから音楽が大好きであらゆる楽器に熱中したという。17歳のときに歌手を志し、ソフィア音楽院、モスクワ音楽院で声楽を学ぶ。1955年、モスクワ音楽院のコンクール、ワルシャワのコンクール、パリ国際コンクールと、たて続けに優勝。1956年、ソフィア国立歌劇場に招かれ『セビリアの理髪師』のドン・バジーリオでデビュー。1957年、『アイーダ』のランフィス役でウィーン国立歌劇場にデビュー。1958年、メフィストフェレスでボリショイ歌劇場にデビュー。そして1960年、ミラノ・スカラ座で『ボリス・ゴドゥノフ』のワルラム役でデビューし、ただちにミラノ・スカラ座から主役級の歌手として認められた。

現代の最も偉大なバス歌手として知られ、完璧なバッソ・カンタンテとしてあらゆるところで絶賛されまくっているので今さら大して付け加えることはないが、ひとこと言えばセクシーな低音で、これぞ低音の魅力である。個人的にもこの声は大好きである。


バスなので、タイトルロールは非常に限られるが、わたくしの知る限りでは、次の三つが有名。

(1)モーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』 クレンペラー指揮 ニューフィルハーモイア管弦楽団 EMI 1966
ギャウロフ(ドン・ジョヴァンニ)、フランツ・クラス(騎士長)、クレア・ワトソン(ドンナ・アンナ)、ニコライ・ゲッダ(ドン・オッターヴオ)、クリスタ・ルートヴィヒ(ドンナ・エルヴィーラ)、ワルター・ベリー(レポレロ)、ミルレラ・フレーニ(ツェルニーナ)、パオロ・モンタルソロ(マゼット)
ギャウロフがタイトルロールを歌っている数少ないCDのひとつだが、評論家による評価はあまり芳しくなく、彼の代表作として挙げられることはあまりないようだ。このオペラ自体が非常に難しく、要求される水準が高いので、どうしても評価が辛口になってしまうのだろう。歌手陣は豪華だし、クレンペラーの指揮も堂々としていて悪くはないと思いますが、いまいち品格に欠けるのかもしれません。しかし、あんまり注文をつけてもきりがないです。ギャウロフのドン・ジョヴァンニは似合ってると思いますけど。

(2)ムソルグスキー『ボリス・ゴドゥノフ』 カラヤン指揮 ウィーンフィル デッカ 1970
ギャウロフ(ボリス・ゴドゥノフ)、オリヴェラ・ミリャコヴィツ(フョードル)、ナジェイダ・ドブリアーノヴァ(クセニア)、アレクセイ・マスレニコフ(ワシーリー)、サビン・マルコフ(シチェルカーロフ)、グレゴリー・ラデフ(ニキーティチ)、レオ・ヘッペ(ミチューハ)
これはギャウロフの代表作とされており、かつこのオペラの定番とされている。リムスキー・コルサコフによる改訂版で、きれいに仕上がった演奏だと思う。が、しかし、いまいちムソルグスキーらしくない。このオペラにはゲルギエフ指揮による1869年版、1872年版の演奏がある。こっちの方は荒削りだが、ムソルグスキーらしさはある。

 

(3)ボーイト『メフィストーフェレ』 ファブリティース指揮 ナショナルフィル デッカ1982
ギャウロフ(メフィストーフェレ)、パヴァロッティ(ファウスト)、ミレッラ・フレーニ(マルゲリータ)、モンセラート・カヴァリエ(エレナ)、ピエロ・デ・パルマ(ワグネル)
メフィストーフェレはギャウロフの当たり役とされている。他の歌手もそろっているが、パヴァロッティのファウストというのはどうなんだろうか。このオペラにはシエピ、デル・モナコによるセラフィン盤があるが、指揮も含めてセラフィン盤の方がいいと思う。

 

あと、脇役として出ているものはやたらと多いが、こっちの方が魅力のあるCDは多い。

同じミラノ・スカラ座のバリトンのスター、カップッチッリと組んだものが多く、当然のことながら、どれも必聴の傑作である。
 

(4)ヴェルディ 『シモン・ボッカネグラ』 アバド指揮 ミラノ・スカラ座管弦楽団 グラモフォン 1977
ギャウロフ(ヤーコポ)、カップッチッリ(シモン)、フレーニ(マリア)、カレーラス(カブリエーレ)、ホセ・ヴァン・ダム(パオロ)

(5)『ドン・カルロス』 アバド指揮 ミラノ・スカラ座 グラモフォン 1982
ギャウロフ(大審問官)、リッチャレッリ(エリザベート)、ドミンゴ(ドン・カルロス)、ヌッチ(ロドリーグ)、ライモンディ(フィリップ)

(6)ヴェルディ 『マクベス』 アバド指揮 ミラノ・スカラ座管弦楽団 グラモフォン 1976

ギャウロフ(バンクォー)、カップッチッリ(マクベス)、ヴァーレット(マクベス夫人)、ドミンゴ(マクダフ)


(7)ヴェルディ 『リゴレット』 ジュリーニ指揮 ウィーンフィル グラモフォン 1979
ギャウロフ(スパラフチーレ) カップッチッリ(リゴレット)、ドミンゴ(マントヴァ公爵)、コトルバス(ジルダ)

(8)ヴェルディ 『アイーダ』  ムーティ指揮 ニューフィルハーモニア管弦楽団 EMI 1974
ギャウロフ(ランフィス)、カップッチッリ(アモナスロ)、カバリエ(アイーダ)、ドミンゴ(ラダメス)、コソット(アムネリス)


すでに紹介したCDばかりですが、ギャウロフを聴くために聴いてもいいくらいです。

 

 

 

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