ミレッラ・フレーニ
Mirella Freni

1935~2020。イタリアのモデナに生まれる。1956年、モデナの歌劇場で『カルメン』のミカエラを歌ってオペラビュー。1960年、グラインドボーン音楽祭で『ドン・ジョヴァンニ』のツェルニーナを歌う。1963年、スカラ座でカラヤン指揮で『ボエーム』のミミを歌い、一躍スターとなる。

1970年代イタリアを代表するプリマドンナで典型的なリリコ・ソプラノ。声の美しさはもとより悲劇のヒロインの感情の表現に優れており、どの役をやっても素晴らしい演技である。美声と演技とのトータルでいえば最高といえるソプラノ。


(1)『蝶々夫人』 シノーポリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 グラモフォン 1987
フレーニ(蝶々夫人)、ホセ・カレーラス(ピンカートン)、ベルガンサ(スズキ)
素晴らしい演奏である。シノーポリはこのオペラを完璧に把握しており、ドラマチックに盛り上がる部分から細かな感情の起伏にいたるまで完璧に表現し尽くしている。そしてフレーニはシノーポリの要求に完全に応えている。フレーニが蝶々夫人を歌ったものとして他にカラヤン盤があるが、これも素晴らしいものの、録音も含めてこのシノーポリ盤の方がやや勝ると思う。なお、カラヤン盤ではピンカートンがパヴァロッティだが、ピンカートンはカレーラスの方がいいと思う。

(2)『オテロ』 カラヤン指揮 ベルリン・フィル EMI 1974
フレーニ(デズデモナ)、ジョン・ヴィッカース(オテロ)、ピーター・グロソップ(ヤーゴ)
これはCDで聴ける最高のオテロ。とくにデスデモナに関してはフレーニにまさるものはいない。こういう役になると本当にフレーニは素晴らしい。他も役者がそろっている。

(3)『エフゲニ・オネーギン』 レヴァイン指揮 シュターツカペレ・ドレスデン グラモフォン 1976
フレーニ(タチヤナ)、トーマス・アレン(オネーギン)
このオペラはかつてヴィシネフスカヤがタチヤナを歌ったロストロポーヴィチ盤が絶大な人気を誇っていたが、現在入手困難となっており、事実上このレヴァイン盤がこのオペラの定盤となっている。じつに美しく仕上がった演奏でフレーニもアレンも申し分ない。これ聴いて十分だと思う。

(4)『ラ・ボエーム』 シッパース指揮 ローマ歌劇場 ワーナー 1964
フレーニ(ミミ)、ニコライ・ゲッダ(ロドルフォ)
フレーニがミミを歌ったものとしてはカラヤン盤があって、こっちが人気であるらしい。しかし、わたしはこのシッパース盤の方が楽しみやすいと思う。トマス・シッパースは47歳の若さで亡くなったオペラ指揮者で知名度はいまいちだが、この人のオペラ演奏はもっと聴かれてもいいのではないだろうか。

(5)『トスカ』 レッシーニョ指揮 ナショナル・フィル デッカ 1978
フレーニ(トスカ)、パヴァロッティ(カヴァラドッシ)、ミルンズ(スカルピア)
フレーニにトスカのようなやや激しい性格のキャラはどうかと思ったが、結構いけると思いました。なお、ドミンゴと組んだシノーポリ盤もあるようですが、そっちは聴いてません。

 

 

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