レジーヌ・クレスパン
Regine Crespin


1927年、フランスのマルセイユに生まれる。パリ音楽院に入学。1950年、ミュールーズで『ローエングリン』のエルザでデビュー。1951年、パリオペラ座に入る。1958年、バイロイト音楽祭に『パルジファル』のクンドリーでデビュー。ワグネリアン・ソプラノとしての評価を得る。1960年、コヴェントガーデンに出演。1962年、メトロポリタン歌劇場に出演。 世界中の一流歌劇場を席巻した。

リリックな美声と力強さを兼ね備えているところはベーレンスと共通しているが、ベーレンスが硬くクリスタルのような美しさとすると、クレスパンのは柔らかく気品のある美しさである。そういう意味では対照的。

たとえば、クレスパンはマルシャリンを歌うがエレクトラやサロメは歌わない。逆にベーレンスはエレクトラやサロメを歌ってもマルシャリンは歌わないだろう。

声が優しく柔らかいので気が付きにくいが、潜在的なパワーの大きさは相当なものである。
五指に入る偉大なソプラノであることは間違いないが、とにかくCDが少なすぎるので、実力に比べて知名度がいまひとつ。

オペラ全曲盤のCDは次の3つのみ。


(1)『ワルキューレ』 カラヤン指揮 ベルリンフィル グラモフォン1966
クレスパン(ブリュンヒルデ)、トマス・スチュアート(ヴォータン)、ヤノヴィッツ(ジークリンデ)、ジョン・ヴィッカース(ジークムント)
個人的には、このクレスパンのブリュンヒルデこそ最高のブリュンヒルデだと思う。力で押しまくる歌い方ではないが、底力を感じさせる。そして何より声が美しい。こんなに美しく透明でしかもパワーのある歌唱はそう滅多にあるものではない。とにかく、この一枚だけでクレスパンのすごさがわかる。録音は古いわりには非常に良い。

(2)『ワルキューレ』 ショルティ指揮 ウィーンフィル デッカ1965 
クレスパン(ジークリンデ)、ニルソン(ブリュンヒルデ)、ホッター(ヴォータン)、ジェームズ・キング(ジークムント)
ここではジークリンデをやっている。クレスパンは声の美しさだけでも図抜けているので、それだけを楽しんで悪いわけがないのだが、やはりクレスパンの実力を知ろうと思うのなら彼女のブリュンヒルデを聴く必要があると思う。

(3)『ばらの騎士』 ショルティ指揮 ウィーンフィル デッカ 1968
クレスパン(マルシャリン)、ミントン(オクタヴィアン)、ヘレン・ドナート(ゾフィー)、ユングヴィルト(オックス)
マルシャリンはクレスパンにぴったりで、これがクレスパンの当たり役なんだなんだろうけど、問題はショルティの指揮である。すごくわかりやすいのだが、典雅さというか優雅さというか、そういうものがない。このオペラはそういう貴族的な雰囲気がないと成立しないのである。

 

 

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