idiotな あまりにも -2ページ目
円高がこれだけ恒常化するとさすがに体力のない下請け零細工場は身売りや倒産を考えるでしょうね‥自己再生を計らない経営者の怠慢と訳知り顔で切ってしまいたくない……

鈴木清剛著の『ワーク ソング』


9年前に両親を亡くし妹のはるかと引き継いだ銀熊工業は、ボルトの検品業務を行ってる。
零細とはいっても従業員を雇ってる。
寡黙で朝から晩まで一緒に行動し以心伝心の二卵生双生児、梨人と里華の野原兄妹。野原兄妹の仕事は敏速で精確な上に雇用主(主人公)の頭が下がるほどまじめ。
もう1人が軽トラでボルトを運んできて検品を終えたら取引先に運ぶことを何十年も続けてる鷲尾さん。体が大きくて丸っこい鷲尾さんは何かと下ネタを絡ませてくるオジサン。

書類上であれ共同経営者で専務取締役の妹・はるかは自分最優先で自由気儘(キママ)に暮らすのが信条の夜遊び大好きシングルマザー。
そしてとりあえず社長という肩書きを持つ秋邦は高校時から始めたバンドがCD発売直前まで上り詰めたところででドラムが違法薬物で逮捕‥解散こそしなかったが気持ちが失せ音楽から離れた。その空虚感を持ったまま仕事に向かってる秋邦。

その銀熊工業、支払い期日が迫ってるが金策も尽き倒産寸前の状態。
ボルトを検品するキコキコという金属が擦れる音が消えてしまうのか?

風前のともしび状態の銀熊工業を取り巻くチョット変わった面々が織りなすワークソング

アナーキーな空気やエキセントリックな出来事やぶっ飛んだ行動に注目されがちですが、愛しき人間と“働く(仕事)”ことに向き合って描かれていることに動かされるものがありました。

同氏著の「ロックンロールミシン」は、経営者の大変さはあるものの、まだモラトリアムというか自己完結で済むんです。青い思い出作りと言われても(当事者は真剣ですよ)仕方ない部分もあるんですね。
ところが今回の『ワークソング』では経営者(秋邦とはるか)だけの問題では済まない。従業員がいるんですよ。
「ロックン~」にはなかった雇用と被雇用の関係とは言っても中小企業どころか個人商店に毛が一本はえたような微細企業!
従業員に対して素っ気なくしてはいてもその互いの思いの距離は近い。
銀熊工業や従業員たちへの気持ちは離れてはいないけど、どうしたらいいのかわからない主人公の切羽詰まりながらの焦燥感なんかがうまく描かれています。それが見えてるからこそエンディングでは作中の彼女彼らと読んでる側が何かを共有できるんでしょうね。

銀熊工業でのキコキコという金属の擦れ合う音。
小説の前半では寂しく辛く聞こえてたキコキコが、終盤では活き活きとしてリズミカルに聞こえてくるから不思議!

「ロックンロールミシン」の位置からもう少し歩を進め社会や現実に対峙していく姿にこれからの大変さや苦悩を感じつも、なにやら優しさを蓄えたしなやかさとたくましさを見ました。

キコキコという擬音が効果的に使われていたのは前述の通りです…
擬音といって思い出すのは中原中也?“ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん”の「サーカス」が浮かんでくるけど、やっぱり宮沢賢治かな…











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「銀の匙」とか「もやしもん」みたいな分野にも関心が広がったのは、すなおに感謝です。

山田健著の『遺言状のオイシイ罠』


1989年、バブル最盛期の初秋。
地上げの真っ只中、かろうじて生き残った農地そこに隣接するプレハブに毛がはえた程度の安普請だけど築3年アパートは1DKバストイレ付で家賃3万円。都心部にそんな奇跡的な物件はやはり訳あり‥
トイレは水洗ではなく汲み取り式。その汲み取り式の肥溜めへの殺虫剤散布を厳重に禁止という条件があった。そのためハエが多いというのが最大の欠点。
つまり畑の肥料のためだけに住まわせているアパートの住人ということ。そのための破格の家賃。
主人公山川健(29)を含めた4人のアパートの住人がいる。

そのアパートの大家であり隣接する4000坪の農地の地主のじいさんが天涯孤独の身でポックリ逝ってしまった。

土肥老人の遺言を伝えに来た顧問弁護士だという竹下から聞いたのは…
「みなさんは、農地の相続人に指定されております」…「相続条件は、最低5年間無農薬・無化学肥料で営農を続けること、最初の2年間は土肥老人がやっていたようにトイレの下肥を使うこと」…

そこから始まる4人の素人農業の騒動記。

生前土肥老人が遺した想定問答ノートを基に竹下弁護士がイタコみたく4人の疑問や質問に応え、亡き土肥老人の意にリードされていく。
4人がとった行動と4000坪の農地の行方は…亡き土肥老人の想いと重なるのか?否か?


前半のいい加減さがドタバタで楽しいだけに後半の流れは授業を受けてる感じに思えたりし、それはそれで得ることもあったのですが‥半ば過ぎたあたりから、4人のやることが手探りながらうまくいくようになり内容がロハスな生活ガイドになってしまいそれまでの壁やハードルだらけの前途に向かっていくバラバラな4人の七転八倒ぶりが薄まっていくことに失速感のようなものを感じちゃいました。
そりゃ主人公たちが努力を重ねて得た成果はあって然るべきだし、それが少しは高揚感に変換されてはいるんだけど‥小説として展開が緩くなっちゃうのは勿体ないなって感じましたね。
終盤に伏線を張ってあったのが活かされ少し動きもみせるのですが、現実的できれいな後味の悪さのないエンディングになっていました。
ひたすら物語性だけを重視しブレーキをかけないままの疾走ぶりでエンディングというのも見たいですが、現実的な問題点(土壌の方法論とかビオトープへの過程とか生産緑地法の改正とか)が絡んでくるとあまり遊離した展開もないのでしょうね

時代を感じるのは、何かを調べるのは書籍だし畑ン中で誰かに連絡したい時はいちいち走り帰って固定電話。ネットやケータイが不要だった頃の話なんですよね。










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Amazonから届いてからエッセイ集とわかるヌケぶり(-.-;)
内容確認して小説だと思ってたのに‥
酔って帰ってからAmazonの中をウロウロするの止めた方がいいの

角田光代氏の『今、なにしてる?』


エッセイ集です。
全体の½が恋愛に関すること、¼が旅にまつわること、残り¼が本の話。‥という構成。

小説を期待してたので低いテンションで読み始めたのですが、けっきょく一気読みでしたゎ。
エッセイに恋愛・旅・本というテーマはあるもののやはり角田光代氏は人間を見てる。この人の描く人物像が平坦にならないのがエッセイからでも伺い知れます。

中でも特筆モノは前半の恋愛に関する部分
こんな身も蓋もないことを10代には聞かせたくないw。それでももしかしたら角田光代氏はその辺にいる初(ウブ)い感じの10代の誰かの耳を引っぱって顔を近づけ「よくお聞き…」と始めたいのかもしれない。恋愛にR指定はないからね。
この本を読む人がすべて何度かの恋愛の修羅場や鉄火場をくぐり抜けてきた猛者ばかりだとは思わない。中には恋愛指南のバイブルとすがる思いで手にとる人がいるやも知れん。
そして、読んで、思う‥
「すごい…恋愛ってそうだったんだァ(感嘆)」
恋愛初心者から博士号級まで角田光代氏の恋愛エッセイに同音の感想が聞こえてきますw
この後の反応は人それぞれ(恋愛観は個人差あります)ですから、持ち帰っての宿題ってことで‥

こんなふうに恋愛というお題でこういう内容のエッセイを書ける人ってやっぱり基本人間を見てる人でないと無理‥
恋愛時の心の動きが面白いようにいろんな方向から連ねられています。いろんな意味でオモシロいです‥笑えます、ひきつります、思案します。

恋愛で悩んでいる人の処方箋にはなかなかならないとは思いますが、体温計や血圧計くらいの大事な役目は果たしてくれそうなエッセイだと思いましたよ。
恋愛に悩んでいるわけじゃない人も普段から体温や血圧のチェックは大切なのかもしれませんよ。










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