【対談】 〜挫折は栄養〜(後編) | The Grasshopper Set オフィシャルブログ Powered by Ameba

【対談】 〜挫折は栄養〜(後編)



(前編はコチラ)

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E「次なんですけど…"L-Town feat.MOMENT"ですよ。
まあMOMENTのラップは死ぬほどうまいんだけど(笑)」

H「俺レコーディングん時に初めて会ったんだけど、あんな小柄な青年が、って。やっぱグルーヴがあるよね。」

S「あれは無理だろ(笑)あれとは競いあえないね。」


E「でシノさんの、結構ぐっときてしまったラインが《弱ったあいつの愚痴聞いて、なんか勝った気になった自分が嫌になる》って。」

S「嫌になる時ないっすか?」

E「それすげいわかるし、競争社会にいると皆もあると思う。」

S「でも、嫌になる人もいると思うんだけど、その逆も多いと思うんだよね。勝った気になって喜んでるやつは結構多いと思うんだよね。そういう話を聞くと寒いって思って、それ違うっしょって。自分で自分に毒持ってんじゃんって言いたかった。」

H「でもこれは元々シノさん2バースあって、6分くらいありましたよね?笑」

S「そう(笑)モーメントも16小節じゃ足りないって言ってきて、20小節×3もあったんだよね(笑)」

E「全体的にも言えますが、シノさんの出過ぎないけどめちゃめちゃアツい燃え滾る温度感があるというか。一度挫折して這い上がってきた感が…」

S「挫折は栄養でしょ!」

E「"タイムカプセル"でもあったけど《あの頃がベストになんてなりたくない》って。」

S「なんかそう思う気持ちが一番せつなくないっすか?
そう思う時期もあって、寝付く前に悶々としながら昔を思いだして、あの時ああしてればな…とか思ってるのとかすげえ嫌で。
このサブジェクト自体は(zipsies)JUNからこのお題どうですか、って。
で、最初は昔を懐かしむ曲になりそうだったんだけど、いざ書こうとしたら、それ俺ヤダわって思っちゃって。懐かしんでジメジメしてるんだったら、そのタイムカプセルを捨てちまえ、って曲にしちゃおうと思って。
昔を振り返ることは悪いことじゃないんだけど、それでプラスになるんだったら良いんだけど、
じくじくあん時良かったなー、みたいのを掘り返しているのは精神衛生的に良くない。」


E「次に"Lush Life feat.サイプレス上野"なんすけど、《挑戦なければ、進歩はない》という言葉が好きで、
チャレンジが無ければミスもしないし、守ってたら点を取ることは絶対なくて。
これは俺ん中でずっと刺さっている。
WATT a.k.a.ヨッテルブッテルの"Think Of…"という曲に《良いもんがあったって出さなきゃ意味ない》ってラインがあって、それに俺はケツ叩かれてきてて、それと同じだな、と。」

S「テーマに関しては俺一人で決めたんだけど、この音楽業界というか、俺と同じような状況で昔から一緒に切磋琢磨してきた仲間にもこのテーマで書いてほしいなってのがあって上野にお願いした。
ぐちゃぐちゃなんだけど、なんか良いよねって(笑)」

H「けど良い意味でアツい曲だけどパーティー感ありますよね!」

S「これのイメージとしては、毎月第二土曜日に渋谷FAMILYで行われている"宴人"ってパーティーがあって、そこで上野と一緒にやったら楽しいだろうな、って。そしたら店長の高山くんも気に入ってくれて嬉しくて。
上野も、最初バース書いたって言って、iPhoneのボイスメモで「シノ、プリプロとれたから!」って聴かされたけど、ボソボソ言っててなにもわからないけど、まあいいんじゃないかなって(笑)
けどレコーディング当日はバッチリ仕上げてきてくれて。
その時ちょうど上野の相方問題があった時期で、お互いの相方の話をしてすげー面白くて、でもやるしかないよねって(笑)あのレコーディング楽しかったなー。」


H「俺が面白いなって思った歌詞は、"SICK feat.FUNK-K"の最後の行。
《舵を取るのはお前の右手、指示を出すのはお前の左手》
両手やんけ、って(笑)詩的に面白いなと思って。」

S「この曲に関しては、基本病気だな、って言いたくて。
若いころは音楽やってると夢を追っかけてるんだね、とか言われて。自分としては飯を食うぜって、金にするぜって、いろいろ音楽をやる目的があったんだけど。
音楽やってる仲間同士にはそんな説明いちいちしないじゃん?
じゃなくて、例えば一般社会の人に自分がやってる事を話する時、志っすかね?とか話もするんだけど。でもそれじゃ格好良すぎるかなって(笑)
じゃなにかな?っておもった時に、俺病気なんすよ、って。
いいおっさんなんだけど、でもやっぱりやっちゃうっていう病気。普通考えられないでしょ?」

E「朝5時以降に電話できる友達HIRORON!」

一同(爆笑)

H「なにー?やってるよーって(笑)昨日も6時半までやってたからね。」

E「そん時もお互い"ほとんど病気"って言ってるよね。病気だしオタクだよね。」

S「でも、またそれがまた愛おしいよね、って歌ですよ。」



E「リリック全体通して、風景として外が多いと思うんすよ。インデックスにも空や街が写っていて。」

H「確かに!天井が無い感じするね。それすごい解る。」

S「それこないだ晋平太と話していて、これ野外でやったら絶対馴染むと思う、って言われた。」

E「スタジオアルバムっぽくないというか、風景とか色が見えるアルバムだなってすげえ思ったっすね。サウンド面というよりかはリリック面だと思うけど。
良い意味で都会感が無いのも。東京にいても市外局番は042だっつー話ですからね。ちなみにこれ地方の人に話すると超驚かれるからね。東京の半分042だから!半分市だし!」

S「環八はまだ仲間意識はあるんだけど、環七より内側入ると、アーバンやなって。中目黒とか歩いてると緊張するもん(笑)」

H「わかる(笑)背筋伸びますよね、シャツしわついてないかな、って。」

E「聖地だね。西東京では基本サンダルだし。《ソウルすり減ったVANSのス二カー》って間違いない。」

H「二人とも原付き似合いそうだもんね(笑)」

S「まあママチャリも乗るし。ジャケのバイクに関しては、かれこれ7~8年くらい乗っていて、もう逝っちゃいそうだから、長い間世話になったから最後ジャケに登場させたいなって。」

E「弔いだね(笑)昔このバイクに後ろから突っ込んだことあるけど(笑)
そんな思い出もありますけども、話をリリックに戻しまして。
"西武ライナスタイラズ2 feat.晋平太"の中に《昨日DLしたLE$のミックステープ》なんて、LE$をここに持ってきてる伝わらなさ(笑)」

一同(爆笑)

S「だって伝わんねーって言っても、自分の日常書いてたらそうなったんだから(笑)」

H「やっぱHIPHOP好きっすよね(笑)」

S「'90ヒップホップもがっつり青春時代に聴いてきて影響を受けてきてるんだけど、
自分の中のヒップホップって何かっていうと、今最先端にあるなんじゃこりゃ、っていうのがヒップホップだと思っていて。
'90ヒップホップって今となってはひとつのジャンルだと思うんだよね。ソウル、ジャズ、レアグルーヴってがあって。
常にびっくりはしていたいし、だから新譜はしっかり聴いている。」

H「やっぱね、'90ヒップホップまでしか聴いていない人が、このアルバムは絶対作れないと思うんだよね。理屈的にBPMの幅も面白いし。」

S「制作の話をするならば、俺は基本サンプリングで作ってんだけど、前にはBPM的に使えなかったネタが、あれ?今これ使えんじゃん、みたいな。
だから割と今回のアルバムも、新しいレコードよりかは自宅のレコード棚漁って、お、これイケんじゃん、って。
ネタに関しても昔はもっとファンキーなものとか、土臭いものとか、Lowがこうなってないといけない、とか色々縛りがあったんだけど。
割と最近の新譜聴いててもばりばりフュージョン使ってたりするし、昔フュージョン嫌っていた時期もあったけど、今回は使っていたりもするし。」

H「確かにフュージョン感ちょっとありますよね。」

S「フュージョンコアみたいな…」

一同(沈黙)


E「俺はDJなんで新しいもの掘っていますが、
シノさんはシノさんで、サウス然り、所謂カントリーシット、Boss Hogg OutlawzとかBIG K.R.I.T.とかそこらへんとかアホみたいに好きっすよね?」

S「なんだろうね。田舎臭さがあんじゃん?やぼったい感じというか、決して鮮麗され過ぎて無い感じとか。
あと、新譜をがつがつ聴くようになったきっかけがUGKだったりする。
倍で刻むハイハットとか昔は苦手だったのに、それを克服させてくれたのがUGK。
BUN BとPIMP Cの二人のラップがすげえタイトだったりして、かっけーって素直に思えて、そこから入ったからサウスとかカントリーラップあたりになったよね。」

E「他に最近聴いてるものとかありますか?」

S「相変わらずCurren$yとかすげー追いますね。Jet Life周りの緩さとか。」

EYoung Roddyとかラップ面白いっすよね。」

S「最近FUNK-Kに「お前は俺にとってのYoung Roddy的な立ち位置だから」とか言って。」

E「まじ伝わんねーから(笑)」

S「あと、結構他の人にも言ってるんだけど、Nasの『Illmatic』が出た時の衝撃を、Kendrick Lamarの『Section.80』で受けてるんだよね。なにか起こりそうな感じがすごかった。他にはScotty ATLとかも聴いてるね。」


H「ちなみに音楽はいつ聴くんすか?」

S「家で集中して聴くときもあれば、走ってる時に聴いたりとかもするし。
あとは、クラブで早めの時間帯にフロアで一人で踊ってるのが割りと好きっていうか、そん時に結構聴いてるんだよね。
やっぱLowとかボトムの部分とか、家で聴いてるとグルーヴをしっかり捉えるのって難しいし、それを体に染み込ませるには、って思うと踊ってる時に色んなこと考えて聴いている。その時間が結構大事かなって。
だからTRAPとかDUB STEPとかは、正直買ったりとか家ではあんまり聴かないけど、藤田とかがクラブでかけてたりすると積極的に踊ろうと心がけているっていうか、クラブで聴いてなんぼだと思うし、染み込ませたい。」


E「今アルバム作り終えたじゃないっすか。実際、終わってからも結構新しい曲も用意してるじゃないっすか?」

S「あのねー、年明けくらいにー…」

H「(エンジニア目線の嘆き)うわー、早い!」

S「でも次はアルバム買ってくれたみんなに、ありがとうの気持ちを込めて、フリーのEPというカタチでビートジャックを。」

H「やっぱり希望としては、例えば日本語ラップしか聴いてなかったリスナーの子が、そこからカントリーラップとかを掘り下げてもらえるようなものができれば嬉しいっすよね。」

S「そうそう、今回でシノさんを知ってくれた人が、次出すやつで色んなアーティストのオケでラップ乗っけたの出すから、それで、このオケかっこ良いなって、Youtubeでもなんでもググってもらったりすれば面白い話だし。
あと内容的には、もしかしたら来年から日本も大変になってくるから、ちょっとポリティカルな内容も増えちゃってるかもしれないんですけど(笑)そこらへんも含めて聴いてもらえたらということで。
あとはまた夏に鬼メローなものでも出そうかなと計画中でございます。」

E「新しいのも楽しみっすね。今後ライブもいろいろ増えてますけど?」

S「そうだね、ライブは最近調子よくやらせてもらってて、ソロはソロのやり方も確立してきて。
こういうコンディションで、こういう気持ちで臨めばイケるっていうのが解ってきたから、最近すげー楽しいね。ライブはライブで絶対面白いと思うから、ライブも是非。」

E「ライブのトーク、相変わらず緩いっすよね?」

S「そうそうそう。なんか「YO!!おまえらー!」みたいなのできなくて(笑)」

E「ライブのトーク中に、俺に話を振るのやめてもらっていいっすか?」

S「たぶんそれは楽しいんだよ(笑)」

E「(苦笑)まあ、でも相変わらず現場にいる数も多いですし、現場と平行しつつまた新しい音源も楽しみにしたいっすね。」

H「とは言えね、まずこのアルバムですからね!色々詰まってますから。」

E「俺の周りもみんな言うけど「一生聴くっしょ」みたいな。」

H「そう、そういうアルバムってなかなか無いよね。」

S「俺も聴いてる。」

H「俺も聴いてるんだな、これが。」

E「(俺も今日聴いてきちゃったんだよなー…)」


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SHINO 
1st Album「COOLIN'」 
2014.9.24 Release

TOP BILLIN'/MUSTBUY BEATS
TBLCD-009