【対談】 〜挫折は栄養〜(前編) | The Grasshopper Set オフィシャルブログ Powered by Ameba

【対談】 〜挫折は栄養〜(前編)



SHINO(以下S)「とういうわけで始まりました三者…三者面談(笑)ですけれども。
『COOLIN'』リリースしまして、エグゼクティヴプロデューサーのイーグル藤田と、HIRORONに集まってもらいました。
そもそも、今回何故この二人をエグゼクティヴに誘ったのかというと、もともと何か一緒にやりてえな、という話はしていまして、The Grasshopper Set自体は"MUSTBUY BEATS"という自主レーベルからリリースを重ねていたわけなんですけど、今回はHIRORONにも手伝ってもらいたいな、ということで"TOP BILLIN"(HIRORON主導のレーベル)とのダブルネームでいくべきだなと。
そしてHIRORONと藤田の仲の良さを、すごい近場でイチャイチャしてるのを見せつけられていたので、この二人が組んで一緒になにかできたら面白いと思って。今回はそういうかたちでさらに仲良くなってもらおうと思っています。」

イーグル藤田(以下E)「ちなみにこれ、事後報告ですからね(笑)クレジット見て初めて知りましたからね。ただの口出し班ですからね。」

S「そういうの踏まえて(笑)アルバムリリースして数週間経ちましたが、振り返りがてらアルバムについて3人で話していければな、と。」


E「過去にトリカブトで3枚で、The Grasshopper Setで2枚フルアルバムを出して、いよいよソロでのCDリリースになりますが、実際どうですか?」

S「そうだね、だんだん一緒にラップする人数が減っていってる(笑)
まあ、グループとソロだとそもそも作り方が違って、グループっていうのは最大公約数を出していく感じっていうの?自分たちの出せるものを倍にして倍にして、合わさった部分を足してどれだけでかい数字で、どれだけの早さで出せるかという感じ。
だから全然違う競技をやっているような感じもしていた。
だからソロに関しては好き勝手やらせてもらえたし、色々巻き込んだけど自分の色もしっかり出せたかなと思う。」

HIRORON(以下H)「トリカブトの時はDJ大自然さんが大体トラックを作っていて、The Grasshopper Setの時にはバケラッタのオケの印象が強いですが?」

S「バケのトラックの色が強かったかな?」

E「シングルで切るやつとか派手目なものはバケが多い。」

H「そうだよね、俺も割とその印象が強いかなと思っていたから、今回のこのアルバムはシノさんが半分くらいセルフプロデュースということで、ビートメーカーとしての部分も見れるので面白かったですね。」

S「The Grasshopper Setの場合、どうしてもライブで映えるものを前提に作っていたので、まあ相方のバケがそういう男なので(笑)そこでソロで作っているようなブルージーなオケとか持ってくと反応があまり良くなくて(笑)そういう意味ではThe Grasshopper Setのビートとはまた全然違ったものになってんのかなとは思うよね。」

H「ドラムの感じとか結構色ありますよね。N.E.C BEATSカラーが。」

S「でも、それも逆に気をつけていたりはしてて。好きなドラム使い過ぎちゃったりするパターンが多くて、そこらへんは藤田に怒られて組み替えたり。」

E「ピンポイントで、この曲のこのキックの話なんですけど…みたいな(笑)そういう口出しはアルバム作る上で必要だと思って。」

S「自分一人でやってると違うもん作っているつもりでも、好きな音色とかドラムのパーツを使ったりしちゃうから。」

E「そこは俺も曲渡されたらクラブでかけたいから、DJ的に鳴りを気にするというか。このキックもう少し丸みを帯びない?アタック強くしてくれない?みたいに、クラブでかけてみたい曲にブラッシュアップできたんじゃないかな、と。」

S「そこらへんの視点とかすごいありがたくて、気にしないわけじゃないんだけどそれ以上に自分のリリックがめっちゃ気に入ってイエーイとかなってると、意外とドラムに気が回らない時もあったりして、そこを冷静な視点で言ってもらえたのは助かった。」


E「HIRORON然り8ronixもだけど、ミックスエンジニアありけりでビート組めてるのがスピード感出せた気がするっすね。
シノくんの時点で何日もドラム練るというよりかは、ミックスダウン以降を想像して投げれているのは、エンジニアの功績はかなりものだと思う。」

S「2人とも付き合いも長いから、良い感じにしてくれるんだろうな、と。前作(EP「Jammin'」)の"ココロフラリ"の時とかも相当やってもらったから、そこの部分は任せちゃって良いかな、と。」

E「やっぱHIRORONの鳴り、ってあるよね。」

H「やっぱり8ronixの鳴りと俺の鳴りは違うっていうのは、アルバム聴いてて楽しかったです。
あとね、"タイムカプセル"好きなんだよね。ある意味、一番優等生。(Zipsies)JUNくん
は一曲だけの参加だけど、それこそアカペラのステムとかを聞いても録り方とかバランスがすごい優等生で、曲調にも合ってた。」

E「そうだね、出過ぎてない感だね。a.k.a.優しさ。あの空気感は若い子にはあまり出せないかな、と。
その空気感で言えば"八国山"が抜群なんだよね。BYG!!EAGLE!!!!」

H「ちなみに俺がミックスした曲が4曲あって"NENRIKI(Remix)""八国山""L-Town""インクルージョン"で、JUNくんが"タイムカプセル"。あとは全部8ronixという並び。
8ronixは割とグイグイくる感じ。すごいアグレッシブ。その土臭さみたいのがミックスに出ててすごいかっこ良いな、と。」

E「まあ、あなたは器用ですよ。」

H「俺はそのころレンジを広くとろうとして盛り上がっていた時期で。」

E「"八国山""L-Town"あたりは顕著だと思うよ。
ミックスエンジニアが複数いるバランスってなかなか面白いと思って。アルバムの幅が広がった気がするっすね。」



H「とはいえ、このアルバムはリリックですよ!」

E「発売前にシノと曲順をどうしようか話していて、シノくんから仮でもらった順番を見ないで俺も組んだら、結構バラバラで(笑)
俺は売りにいこうとしてるというか、派手なものは前半詰め込んで、みたいな。」

H「ちなみに藤田の一曲目は何だったの?」

E「"YAMASHIT"!ド級のシングルカットでしょって。
で、SHINOくんの並びで聴いたら、リリックを聴いてようやく(その曲順が)理解できたというか、すごいきちんと一枚のアルバムになっていて。何周も聞ける理由はリリックだね。」

S「そこらへんで言うと、一曲目に"iKnow"持ってきてるのは、基本的にこのアルバムが同世代や、
社会人でくたびれて家帰る時なんかに聴いてもらいてえ、ってのがあったりして。
昔20代の頃遊んでいたヤツとか最近会ってないやつや、父ちゃん母ちゃんになってバタバタしてるやつに、一曲目"iKnow"から「お久しぶり、俺は元気にやってるよ」って。
普段電話とかメールとか手紙とか出せてないけど、遠くからこれを聴いてくれてるやつに、俺はいつも通りやってるよ、っていうのが一曲目に欲しかった。」

H「 (食い気味で)あのね、このアルバムの中で一番好きなのは"iKnow"。それは本人たちにも言ってるけど。」

S「(苦笑い)」



E「じゃあ、俺がアルバムから気になるパンチラインをいろいろ引っ張ってきたんですけど…
"西東京CountryRock"及び"YAMASHIT"とかは我々東村山人、片田舎の奴らの歌なんだけど。
《イオンができて消えた商店街》というラインがあって、それが深すぎて。」

H「そう、ここで登場ですよ!マイルドヤンキー!
シノさんのブログを読んで面白そうと思って購入した本『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の招待』(原田曜平著/幻冬舎新書)これまじ面白くて、よりアルバムと風景がリンクする。」

E「やっぱり田舎だからさ、都内みたいにあんま人いねーし。」

H「俺も東北の田舎育ちだから、その空気感はわかる!」

E「時間の流れがそんなに早くなかったり、あと自然がたくさんあるな、というのがこのアルバム聴いてわかる。ゆったりした気分になれる。」

S「実際そうだよね、"都会と田舎の間"じゃないけど、俺渋谷に住めって言われたら結構きついもんね。生まれも育ちもそうだから。」

E「地元から出ようとしたことあるんすか?」

S「…ないね(笑)まあ、調子良いよね、緩いところとか。
あとさっき言ってたラインもそうだけど、西東京もどんどん地方化して経済の歪みが生まれ出してて。
イオンができてやっぱり便利だし、俺も行くんだけど、ただそのまま便利だな、って言ってていいのかなって。うちの周りの地元の商店街とかも貸店舗、貸店舗…って、みんなシャッター閉まってるから。
それはそれで巨大資本に全部もってかれるんじゃないか、とか手放しで喜んでもられないなって。
実際街を走ってるとわかるもんね。でかいチェーン店はボンボンあるんだけど、その一方で潰れていく店がたくさんあるからね。」

E「ガキの頃じゃ気づかないっすね。」

S「それは確かに、俺も高校生の頃とかじゃイエーイってなってるだろうけど…おっさんになったね。」



E「じゃあ、また俺から突っ込むんすけど。
俺が一番金玉が締まる思いをするというか、"iknow"もそうなんですけど、先輩シットの"TARBINE"なんですけど、これ一回ボツりそうになってたんですよ!」

S「そうだっけ?(笑)」

E「最初あんまかな、って言っていて。これ絶対ミックスで化けるっすよ、って言って。もっと暗い感じだったんだけど。
でね、これの一行目に《俺は燃えカスだ》って。
このラインは昔のシノさんじゃ出てこないと思うんすよ。若いころはSWAG推しみたいなのってあると思うんだけど、自分が弱い、とかそういう姿を見せれるようになった人っていうのは強いんじゃないかな、と思って。
これはやっぱり背筋が伸びる思いがする。」

S「この曲自体、最後は「お前はどうなんだよ?」って問いかけてんだけど、その前提として、俺は燃えカスだけどお前はどうなんだよ?って言いたくて、これから入っているんだよ。」

E「やはり《やらない理由はみつからない》これに尽きますよね。」

H「ストイックソングですね。」

S「これは、昔からお世話になっている先輩がよく言っていて。「だってやらない理由はないでしょ?」って、本当そうだなって。
その先輩も、どんだけ金が安くても自分のやりたい仕事がやりたいんだって話をしていて、アツいなって思って。」

E「俺もこの間久々に高校の同級生に会って、相変わらず音楽やってるよなんて話していて、何気なく「引き際わかんなくなっちゃったなー」って言ったら、そいつから「引く気なんかさらさらないでしょ?」って言われてハッとして。死ぬまでやりたきゃやるだろうなって。
でも、この"TARBINE"は、やるんだったらばっちりかませよ、っていうストイックソング(笑)」

S「そこらへんで言うと、最近DEJIのツイートで、
自分は社会人で自称ラッパー、自称アーティストでやっているけど、週末しか時間は使えないが、その中でやるかぎりは限りなく上を目指してやっていきたい。
で、その気持ちが無くなったらあっさり辞めます。って。
これすごい的を得ているなって思って。その気持ちとしては"TARBINE"と一緒かな、って。
やるならやるっしょ。」

E「アルバムにも参加している晋平太くんとふらっと話してる時に、
普段の生活がままならないのに音楽なんかできないでしょ、って言っていて。
まず真っ当に生活できてこその音楽でしょ、っていう晋平太くんの音楽との距離感を話してて。
大人になるといろいろ事情は増えるけど、その中でもうまく付き合ってこそだな、と。」

H「すみませーん、おかわり。(すごいタイミングで追加注文)」

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後編へつづく