父が定年退職したときの話なので、
もう何年経っているでしょうか
5~6年は前のことです
父は、複雑な家庭で育ち、
十分な教育も受けられないまま、
その後はずっと同じ職場で、
朝は定時に起きて定時に出勤し、
夜も毎日同じ時刻に帰ってくる、
そんな勤労生活をこつこつと続けてきました
定年まで勤め上げた父
実家暮らしだった頃はそんなことは当たり前で、
何とも思っていなかった親不孝な私でした
定年退職したその日、
一通のメールが届きました
「 父さんがここまで働いてこれたのは、
娘たち、おまえのおかげだ ありがとう 」
と
そして、
退職金から30万円が私の口座に振り込まれました
「 このお金は、妻や母としての家族のためじゃなく、
おまえが自分自身のために自由に使え 」との言葉と共に
このようなときの相場の金額など私は知らないし、
普段は口数の少ない父がそんなふうに私に言ってくれたこと自体が驚きで、
少なくとも父や私にとっては高額なそのお金、
私はありがたくて、
もったいなくて、
ずっと手が付けられませんでした
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そうして2~3年が経ったでしょうか、
もしかしたら、何か私の欲しいものを買って形で見せた方が、父は喜ぶんじゃないか
そう思った私は、鞄を買いにいきました
それが MIUMIU の鞄です
私はその写メを父に送りました
「 お父さん、このバッグを買わせてもらったよ! 」と
そうすると父は大喜びで、
「 おまえ、あのお金をまだ、大事に持っていてくれたのか!ありがとうな! 」
と言ってくれました
父の笑った顔がくっきりと目に浮かび、
私はとてもうれしく思いました
‥でもその鞄、
私はやっぱりもったいなくて、
袋に入れたまま使うことができませんでした
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今、
買ってからさらに2~3年が過ぎました
「 よし、
これを持って父に会いに帰ろう 」
私はそう決めました
電車に乗れなくなって久しく、
帰省もずっとしていません
電車での長旅はかなり不安ですが、
息子と二人、
この春休みは帰省しようと思います
