小さい頃、たぶん3歳から5歳か6歳位の間の事。
お母さんのことが怖くて嫌いで、ずっとおばあちゃんの家で過ごしてた。
お母さんに睨まれながら過ごす家とは全然違う。
ふつうのおじいちゃん子、おばあちゃん子とは少し違った。
お祭りじゃなくてもお正月じゃなくても毎日着物を着ていた。
遠くへ出かける時だけ洋服をきていた気がする。
着物を着る理由として…
舞妓修行だった。
小学校を卒業したらおばあちゃんのお友達の置屋に「仕込みさん」として住まわせてもらう。
中学校を出たらすぐに舞妓になるんやで、と毎日言われていたけど嫌な気はしなかった。
おばあちゃんのお友達の置屋によく連れて行かれて、
お姉さんやお母さんをうっとり見ていた。
絢爛、妖艶、愛嬌、粋…芸に励むお姉さん達はみんな綺麗だった。
いつも「私もお姉さん達みたいになる」とおばあちゃんに言ってた。
まだ幼稚園にも上がってない私におばあちゃんは御稽古を付けてくれた。
お花とお茶が一番好き。
三味線よりもお琴が好きでおばあちゃんを困らせてたらしい。
幼稚園に上がっても小学校に入学しても御稽古は続いた。
御行儀や言葉が身に付いてきたころお姉さんの衿かえを見に行った。
赤い縮緬から白い衿になったお姉さんはとても色っぽく見えた。
「ええ旦那はん決めて、はよ衿かえせな」とおばあちゃんは私に云う。
まだ舞妓にもなっていない私を見て芸妓の話をする。
おぼこい仕草に完璧なをどり、だらり帯を靡かせて桜の簪に手を添える。
左手でたくしを抑えて身の堅さを表す。
籠を抱いてお姉さんの後を付いて、御座敷から御座敷へ。
私の方言はちょっとおかしい。
ろくに口もきけない頃から叩きこまれた京言葉が強い。
もっと色々御稽古しておけば…
もっとおぼこい仕草で旦那はん達を魅了したい。
芸妓になったら機転が利いて粋なお姉さんになりたかった。
久々に着物着て出掛けよう。