目が覚めてから1ヶ月、精密検査を受けた後、異常が無いことが確認された俺は、3ヶ月ぶりに、再び日常に戻っていった。

未来と時也からは、向こうの世界では、俺は最初から存在していなく、明日香は一人っ子ということになっているが、真人と絵玲奈にだけは、今回の一連の出来事が記憶に残されているという連絡を受けた。そして、それぞれの人生を前向きに生きていると聞いた。

少し寂しい気もしたが、ほっと一安心もしていた。そして、2人と会うのも、これが最後であった。

「さて、生まれ変わった小森亮介を、存分に見せつけるぞ!」

そう意気揚々に、俺は久々に会社へ向かった。

3日後、俺はチーフの席の前にいた。プログラムが一部異なっており、想定していたとおり稼動しなかったため、先方からの問い合わせがあったのだ。原因は、上司であるチーフ・平上の設計ミスであった。しかし、俺が実際の作業を行っていたため、

「良く確認すれば気づくはず、お前のミスだ!」

と散々言われていた。

新規に契約を結んだ、大口の顧客であったため、直接お詫びに伺うことになった。先方からの希望により、場所は都内のダイニングバーで、経費はこちら側の負担でという運びとなった。社長は自身が単独、または平上と2人でと提案していたが

「小森君にも、こうした交渉を一人で解決する経験させたほうがいいと思う。」

と平上が進言したことで、俺が一人で行くこととなった。結果としてみれば、厄介ごとを押し付けられた形だ。

「すまんな、小森。頼むな。」

社長のその言葉が、せめてもの救いであった。やれやれといった思いで、俺は外回りに出た。相手側の対応者は外国人のようであり、俺は考えるだけでも気分が滅入ってきた。

緊張で胃が痛くなってきたため、途中で胃薬を買おうと、近くのドラッグストアに入った。