俺の声に応じて、木の陰から、先ほどの格好にマスクをとった姿で2人が現れた。

「完成したのよ、現実時間に戻る装置が。テスト済みで、決行は年度末、3月31日よ。」

そう未来から告げられ、俺は安堵の気持ちがこみ上げてきた。ようやく元の世界へ戻るメドが立ったからである。新年早々に朗報が届き、俺は気持ちが舞い上がっていた。

「そうか、じゃあ、これからは、ここと行き来できるようになるっていうことなのかな?」

「…」

俺の問いかけに、2人は黙り込んでしまった。先程の浮かれ気分は吹き飛び、その空気に耐えかね、思わず2人に尋ねた。

「どうしたんだ?設計図とかあるだろうし、それを使えば出来るんじゃないのか?テスト済みって言うことだし。」

すると、単純にそう考えていた俺に対して、2人は思いもしなかった現実を告げた。

「前にも話したけど、私たちは、ただ史実を記して記録していくだけの存在であって、運命をコントロールする権限なんて存在しない。この装置は、本人にだけでなく、運命や歴史そのものを歪めるリスクが大きすぎるの。今回の件に関して、1回限り、上層部から使用を認められたのよ。」

「つまり、元の世界に帰るのか、ここの世界に残るか、決行日までに、あんたが決断しなくちゃいけないんだ。」

「すぐに返答はいいわ、また聞きにくるから。」

そう言い残し、2人はまたどこかに行ってしまった。

残された俺は、ただその場に立ちすくしていた。

ここに来たばかりの時は、とにかく早く元の世界に戻ることだけを考えていた。しかし、こちらでの生活も順調に回っている今、俺はどのような未来を選択するべきか、すぐには決めることができなかった。