しかし、無情にもシャトルは俺のコートに落ちていた。運悪く、一か八かで前に詰めていた鳥羽のラケットのフレームにシャトルが当たり、ネットを超えてコートに入ってしまったのだ。
スマッシュを返され、俺は精神的に動揺を隠せなかった。それでも、俺が勝機を見出すにはそれしかなく、鳥羽のスタミナをさらに奪うことに徹した。
5-15
ここで返せなくては勝機がない、祈るような気持ちで、俺は当初の作戦通り、スマッシュを打てる体勢まで鳥羽の攻撃を返していた。すると、鳥羽の足が動かず、再び甘い球が俺に返ってきた。
『これが、ラストチャンスだ!』
俺は渾身の一撃でスマッシュを打った。足が止まりだしていた鳥羽は対応できず、この試合、初めて俺は攻撃から得点を奪った。
この1点は大きかった。その後、試合の流れが大きく変わった。鳥羽は俺のスマッシュに最大限の警戒を払っていた。そのことが、クリアや、それとほぼ同じ動作で手前に落とすドロップといった、ほかのショットへの反応を遅らせていた。
『利いている、練習不足のための持久力不足っていう弱点と、相手のスマッシュへの苦手意識を最大に突いていて、他のショットも活きてきている!』
28-26
第2ゲーム、ジュースの末、最大で10点差あったのをひっくり返し、俺はこのゲームを鳥羽から奪った。鳥羽がゲームを落とすのは、今年になってからは初めてであった。
会場がどよめき、絵玲奈と真人はガッツポーズをしていた。
第3ゲーム、先ほどのゲームでの勢いで、俺は5-1まで試合を進めていた。このまま押し切ることができれば、俺にとって理想的な展開であった。
しかし、それからが混戦であった。お互いが力のない返球で精一杯であり、試合はもつれにもつれ、10-7まで試合が進んでいた。ここまで混戦になってきた原因について、生野先輩は見抜いていた。
「どうにかイーブンまでは持ち込んだけど、ここからが勝負だ。小森君だって、ここ最近になってようやく練習の成果が出てきていて、中学時代は練習不足、十分なスタミナがあったわけではないんだ。」
俺にとっても予想以上に試合が長引き、そのことで動きが鈍くなり始めていた。それでも、主導権はまだ俺の方にあり、リードした展開で試合を進めていた。
「よし、いける。俺の方がまだ若干体力が残っている。スマッシュにはさっきから反応すらできなくなってきている。苦手コースを徹底的に攻めれば勝機がある!」
シーソーゲームであり、精神が削られるような緊迫した展開が続いた。そんな中、生野先輩は鳥羽のある動きが気になっていた。
「どうもおかしい、さっきから右前スミへのスマッシュに反応すらしていない。来る可能性が高いことは、鳥羽くらいの選手ならば確実に分かるはずなのに、どうして…」
15-12
中盤に差し掛かり、勝利が目前になってきた。すると、後方で鳥羽が態勢を崩した状態で、甘い返球が帰ってきた。この上ない、絶好のチャンスであった。
「よし、この一撃、渾身のスマッシュで試合の流れを決めてやる!」
そう考え、俺はスマッシュの態勢に入った。その瞬間、生野先輩があることに気がついた。
『足とラケットの動作がすでに開始している、まずい。』
鳥羽の動きに気づき、生野が俺に向かって叫んだ。
「いけない、これは罠だ!スマッシュじゃなくってクリアか左側へのドロップにするんだ!!」
その声が届く前に、既に俺はスマッシュを打っていた。そして、決まったと思った渾身の一撃は、俺のコートに返されていた。それまでとは異なり、明らかに狙って返されたものであった。
スマッシュを返され、俺は精神的に動揺を隠せなかった。それでも、俺が勝機を見出すにはそれしかなく、鳥羽のスタミナをさらに奪うことに徹した。
5-15
ここで返せなくては勝機がない、祈るような気持ちで、俺は当初の作戦通り、スマッシュを打てる体勢まで鳥羽の攻撃を返していた。すると、鳥羽の足が動かず、再び甘い球が俺に返ってきた。
『これが、ラストチャンスだ!』
俺は渾身の一撃でスマッシュを打った。足が止まりだしていた鳥羽は対応できず、この試合、初めて俺は攻撃から得点を奪った。
この1点は大きかった。その後、試合の流れが大きく変わった。鳥羽は俺のスマッシュに最大限の警戒を払っていた。そのことが、クリアや、それとほぼ同じ動作で手前に落とすドロップといった、ほかのショットへの反応を遅らせていた。
『利いている、練習不足のための持久力不足っていう弱点と、相手のスマッシュへの苦手意識を最大に突いていて、他のショットも活きてきている!』
28-26
第2ゲーム、ジュースの末、最大で10点差あったのをひっくり返し、俺はこのゲームを鳥羽から奪った。鳥羽がゲームを落とすのは、今年になってからは初めてであった。
会場がどよめき、絵玲奈と真人はガッツポーズをしていた。
第3ゲーム、先ほどのゲームでの勢いで、俺は5-1まで試合を進めていた。このまま押し切ることができれば、俺にとって理想的な展開であった。
しかし、それからが混戦であった。お互いが力のない返球で精一杯であり、試合はもつれにもつれ、10-7まで試合が進んでいた。ここまで混戦になってきた原因について、生野先輩は見抜いていた。
「どうにかイーブンまでは持ち込んだけど、ここからが勝負だ。小森君だって、ここ最近になってようやく練習の成果が出てきていて、中学時代は練習不足、十分なスタミナがあったわけではないんだ。」
俺にとっても予想以上に試合が長引き、そのことで動きが鈍くなり始めていた。それでも、主導権はまだ俺の方にあり、リードした展開で試合を進めていた。
「よし、いける。俺の方がまだ若干体力が残っている。スマッシュにはさっきから反応すらできなくなってきている。苦手コースを徹底的に攻めれば勝機がある!」
シーソーゲームであり、精神が削られるような緊迫した展開が続いた。そんな中、生野先輩は鳥羽のある動きが気になっていた。
「どうもおかしい、さっきから右前スミへのスマッシュに反応すらしていない。来る可能性が高いことは、鳥羽くらいの選手ならば確実に分かるはずなのに、どうして…」
15-12
中盤に差し掛かり、勝利が目前になってきた。すると、後方で鳥羽が態勢を崩した状態で、甘い返球が帰ってきた。この上ない、絶好のチャンスであった。
「よし、この一撃、渾身のスマッシュで試合の流れを決めてやる!」
そう考え、俺はスマッシュの態勢に入った。その瞬間、生野先輩があることに気がついた。
『足とラケットの動作がすでに開始している、まずい。』
鳥羽の動きに気づき、生野が俺に向かって叫んだ。
「いけない、これは罠だ!スマッシュじゃなくってクリアか左側へのドロップにするんだ!!」
その声が届く前に、既に俺はスマッシュを打っていた。そして、決まったと思った渾身の一撃は、俺のコートに返されていた。それまでとは異なり、明らかに狙って返されたものであった。