「大丈夫かい?倒れるまでやるっていうのは、いわゆる美徳と考えられていることだけど、本当に倒れたらまずいから、そこは相談して欲しかったな。あ、僕は部長の生野、よろしくね。」

どうやら、外周を走っている途中で意識を失い、ここまで担がれたということであった。若干、頭痛やめまいが残っていたが、幸い、大きなケガとかはなかった。生野からは、今日・明日は部活を休むように言われ、明後日からまた参加することとなった。

土曜日、朝練の準備をしていると、生野が俺に話しかけてきた。

「おーい、小森君。今日は部活が終わったら、僕とラリーしようか?」

「あ、はい。よろしくお願いします。」

この間倒れたとき、運んでもらった恩もあり、また、今の時点での自分の実力を測っておきたいと考え、俺は申し出に応じることにした。

部活終了後、次のバスケットボール部が来るまでの1時間の間に、俺たちは軽めの昼食を取り、ラリーを始めた。しばらく続けていると、この1ヶ月の間での自身の変化にまず気づいた。

「あれ、10分続けても息が上がってきていない。これは、今までの練習の成果が出てきたっていうことなのか?」

「俺でも、捨てたもんじゃないかもしれない。やればできるのか?」

これまでの練習の成果を実感でき、俺はリズム良くシャトルを返していけた。しかし、ラリーを続けていくうちに、また別の考えが頭をよぎった。

「あ…れ…、これってもしかして、俺がいいように振り回されているってことじゃ…」

結論として、それも当てはまっていた。生野はネット際は滅法強かったが、ドライブとスマッシュの精度が荒かったため、よくネットに掛かっていた。威力に手加減はしつつも、その修正を図っていたのであった。

「な、なんて人だ…。俺の動きまでコントロールして、息一つ切らしていないなんて…。」

30分ラリーを続け、俺はすでに汗だくであった。それでも、部活で通常メニューをこなしてからさらに追加メニューをこなすことは、1ヶ月前の自分には出来なかった。その点は、はっきりと確認できた成長であった。

「うん、いいラリーだったよ。僕のほうは僕のほうで、ショットのコントロールが良くなってきているし、君のほうも持久力がだいぶついてきているからね。この1ヶ月、よく頑張った。あとは、どういうタイプになりたいかに応じて、必要な技術を身につけていくことだ。君はがむしゃらに練習するタイプのようだから。それじゃ、今日はこの辺であがろう、お疲れ。」

そう言って、生野先輩は颯爽とコートを後にしていった。

体育館の片隅で大の字になり、ぼんやりと天井を見つめていた。まだまだ足りないものがあることは十分感じていた。それでも、もう少し、自分の成長と可能性を信じてもいいんだなと思えた、生野先輩とのラリーであった。