「遅れているぞ、小森!もっと頑張れ!!」
「まだ折り返しにも差し掛かっていないぞ、もっと粘れ!」

最初の2週間は、入部したときの勢いで何とか喰らいついていくことができた。しかし、現実を突きつけられていくにつれて、次第に気持ちが萎えてきていた。

そんなある日、とうとう体も心も悲鳴を上げてきた。あと15分で部活が始まるが、俺は校内の裏庭にあるベンチで立ち止まっていた。

「ここまでハードだとは思わなかった…。きつすぎて、ついていくことすらできない。やっぱ俺には、無理だったのか…。」

カバンの中には、退部届も準備していた。これを出せば、どんなに楽になれるだろう―。

「亮介、部活行かないのか?」

声をかけてきたのは真人であった。空手部に入り、すでに道着に着替えていた。

「ああ、今日はちょっと、体調が良くなくてな…。」

「そうか、あんま無理すんなよ。じゃあ俺、部活行くから」

そう言って、真人は練習に向かっていった。その姿に、俺は入部を決めたときのことを思い出した。そうだ、挑戦したい気持ちをくすぶらせていたあの頃を繰り返したくない、今度こそ、想いを実現したい、そう決めて入部したんじゃないか。

『ここでドロップしたら、せっかく入部した意味がなくなってしまう。もう少しだけ、やれるだけやってみよう。』

今日はサボろうと思っていたが、考えを変え、ギリギリではあったが、この日も俺は部活に参加した。

そんな迷いに悩んでいる俺に構うことなく、今日も容赦ない練習量が待ち構えていた。身体能力でどうしようもない部分を、気持ちだけが支えていた。

決して前向きな気持ちばかりではない。未来に、ただどうしようもなく、無力に時を過ごしていた自分を思い返しては、それを原動力に足を前に進めていた。

『俺はもう…あの空虚な時間にだけは、戻りたくないんだ…!』

その一心だけで、俺は限界を迎えつつあった肉体で、学校の外周で走っていた。

気づくと俺は、保健室のベッドの上にいた。いったい何が起きたのか、さっぱり分からずにいた。ただ、ややひどい頭痛がしていたのだけは、はっきりしていた。