「私たち2人はタイム・スクエアという組織に所属しているの。あなた方の世界で例えるなら、神や天使といった類ね。ただ、私たちは史実を記して記録していくだけの存在であって、一般的にイメージされるような、運命をコントロールする権限なんて存在しない。理屈で言えば、あなたがタイムスリップして、この時代に来ることなんてありえないはずだったの。それなのに、時也が隠れて変な装置を発明していたのよ。『恐竜をこの時代に持ってくるんだ!』とか言ってね。それで、それを取り上げようとしたら…。」

「驚いて、装置のスイッチを押しちまったんだよ。設定とか全く調整していなくて、たまたまあんたが、この時代に転送されてしまったんだ。」

一応は説明がつき、俺は自分が置かれた状況を理解した。はたからすれば、突拍子もない説明ではあるが、すでに今の状況が突拍子もない状況であったため、納得するしかなかったのである。

「まぁ、事情は分かったよ。簡単に言えば、俺はタイムスリップしちまったってことだな。元の時代の俺はどうなっているんだ?いきなりいなくなっていたら、流石に妻と子どもが驚いてしまうと思うんだが…。」

「それなら心配いらないわ。一応、昏睡状態っていうことで、肉体は存在しているから。時間の経過は、こちらの時間よりはかなり遅くなっているはずよ。」

「ああ、それなら安心した。まぁ、とりあえず、状況からして、元の時代に帰してもらえるっていうことだよね。早く帰ってやんないと、流石に心配だし…。」

そこまで言ったとき、未来がため息をついた。別に、同じ転送装置で戻せば良いだけじゃないかと、俺は思っていた。

「甘いわね、それができるなら、最初から夢落ちで処理しているわよ。」

そして、未来の先程のため息の理由が明かされた。

「時也の造った装置は使い捨て型だったから、新たに装置を開発しなくてはならない。しかも、それは偶然造りだされたから、どうすればあなたを元の時代に帰せるかもまだ分かっていない状況なの。」

「え、それじゃ…」

俺は続ける言葉を失った。

「あなたに残された道は2つ。無事に戻れる方法が開発されて、元に時代に帰れるか、この時代を生きていくかよ。それじゃあ、私たちはこれで。」

そう現実を告げると、未来たちは亮介から姿を消していった。

一人残された亮介は激しく動揺していた。未来に戻ることもできず、かと言って、自力で打破することができない現状に、突然巻き込まれたからである。

『そんな…。そりゃあ、あの頃に戻りたいとも考えたけど、こんな形じゃない。いきなり過去にタイムスリップしてしまって…真希や子どもたちの生活はどうなる?それに、そもそも、本当に戻れるのか?一体、俺は…どうなってしまうんだ!!!』

不安に満ちた俺の心の叫びだけが、辺りにむなしく響いた。